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2024-07-08 13:43:00

 

~「Global×Innovation人材育成フォーラム」設置、財政支援のあり方が焦点に~

 

留学促進のあり方について産学官のステークホルダーが意見交換を行う場として、文部科学省は新たに「Global×Innovation人材育成フォーラム」を設置し、75日に第1回目の会合を開催した。政府の教育未来創造会議は昨年とりまとめた第2次提言で、2033年までに日本人学生の海外留学者数を50万人、外国人留学生の受入れ数を40万人とする目標を掲げている。この内、海外からの留学生受入れ数はコロナ禍の終息を受けてV字型回復を遂げつつあるが、日本人学生の海外留学は拡大に向けた具体的な道筋が描けない状況が続く。

 

文科省が同会合で配布した資料「共創のための留学生モビリティ拡大の方向性」によれば、令和4年度時点で日本の大学・大学院、短大、専門学校等、いわゆる高等教育機関に在籍の日本人学生約313万人の内、同年度内に海外留学をした者は10万人に満たず(97857人)、その比率はわずか3.1%にとどまっている。一方で日本の高等教育機関における在籍者数全体(外国人留学生を含め333万人)に占める外国人留学生の在籍割合は5.5%(181741人)で、日本人学生の留学割合はこの数値を2ポイント強下回っている状況だ。人口千人あたりの海外派遣留学生数でも、日本は約0.5人と、韓国(2.0人)、フランス(1.6人)、ドイツ(1.5人)のほか、人口規模自体が大きい中国(0.7%)にも及ばない。

 

同じく文科省が令和4年に行った海外留学に関する調査では、日本人学生に海外留学へ行かない理由も尋ねており、経済的な余裕のなさや語学力の不足、投資効果への疑問を挙げる声が多かった。

中でも留学実現のために最も切実なハードルとなっているのが経済状況で、留学費用として捻出できる最大の金額が100万円以下とした学生の保護者が65%を占め、201万円以上を出せる保護者は2割に満たなかった。さらに今年に入って以降、国内外の外国為替市場で急激に進んだ円安ドル高も逆風となり、海外留学自体を見合わせる傾向はさらに強まっている状況だ。

 

今回、フォーラムが議論すべき内容として盛り込んだテーマの中には、就職活動において留学が不利益とならない工夫や、留学が将来のキャリア形成に評価されることの認知向上等と併せ、奨学金等の充実による「経済的不安の払しょく」が挙げられている。教育未来創造会議が提言した数値目標を「絵に描いた餅」としないためには、財政面でのサポート体制をいかに構築していくかが中長期的な課題となりそうだ。

 

一方で、海外留学に興味を持ったきっかけを日本人学生に聞いた調査では、身近な留学経験者の話を聞いたとか海外に行ったことのほかに、「国内で外国人と接する機会があった」ことを挙げた人も2割近くに達しており、キャンパス内やアルバイト先での外国人留学生等との日常的な接点が、海外に目を向けるきかっけとなったことが読み取れる。

 

盛山正仁文部科学大臣は77日の会見で、日本人学生の海外留学目標を達成するためには「社会全体で留学機運の醸成に努め、志ある若者が安心して留学にチャレンジできる環境の整備等にスピード感を持って対応することが重要」としつつ、「どのような支援を手厚くしていくことができるのか、結局は財源の話になるので、そことの関係を詰めながら対応を講じていくことになる」と語った。

また、新たに立ち上げた「Global×Innovation人材育成フォーラム」が多くの若者にとって留学実現に向けた推進力となることへの期待感を示し、「社会や地域にイノベーションを起こすグローバル人材の輩出に繋げていきたい」と抱負を述べた。

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