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留学生らが来日前に事前取得する在留資格認定証明書(COE)に関して、出入国在留管理庁は28日、すでに作成済み分の有効期間を再延長する措置を決めた。日本政府の新規入国外国人に対する入国制限が、年明け以降も当面延長されたことに伴う措置。
これまでは作成日が昨年1月から今年7月31日までのCOEは2022年1月31日まで有効としていたが、これを今年10月31日作成分までは等しく来年4月30日まで有効とみなす。また有効期間を「作成日より6か月間有効」とする対象時期も見直し、今年11月1日から来年4月30日までの作成分とする。
【繰り返されるその場凌ぎ 留学予定者の行動縛ると批判も】
日本政府の水際対策をめぐっては、留学生ら外国人入国予定者の入国時期の遅れが長期化しており、入管庁はこれまでも留学予定者らに交付済みのCOEの有効期間を延長する措置を度々繰り返してきた。一方で入国の見通しが立たない中で入管庁がCOEを発行・延長し続けても、次のステップである在外公館での査証(ビザ)申請の目処が立たず、海外の留学予定者らが長期間行動を縛られる状況が続くことへの批判は根強い。今回の再延長措置も、その場凌ぎの対応にすぎず、留学生や就労者などの国際人流が滞っていることへの根本的な解決策にはなり得ない。オミクロン株を理由にした「緊急避難的な措置」を、解除の基準や条件も示さず、ズルズルと無期限化することは許されない。独自の指標や科学的知見に基づき、水際緩和に踏み切る国が相次ぐ中、日本政府の真摯な対応が求められる。
2021年に入ってから「留学」の在留資格で日本へ新規で入国した外国人が、10月までの累計で9930人とようやく1万人規模に達したことがわかった。新型コロナウイルス感染症拡大を受けて日本政府は1月下旬から留学生ら外国人に対して入国制限を実施。新たに成立した岸田文雄政権は11月に一旦入国を再開するも、オミクロン株を理由に再び受入れ停止に踏み切った。
今年入国できた留学生のうちほぼ半数(4957人)は1月の入国者で、その後の9か月間は「特段の事情」により認められた5千人弱にとどまる。コロナ禍前までは毎年約12万人が、また昨年はコロナ禍の中、約5万人の留学生が入国しており、今年の水準は2019年以前の1割にも満たない。
学生数の減少に見舞われている教育機関への影響は甚大で、中長期的にも日本語教育を担う人材や受入れインフラが打撃を被ることは不可避。岸田政権はオミクロン株の封じ込めを唱え、外国人の新規入国は一律で締め出す一方で、日本人を含めた再入国者に対する水際対策は実効性ある隔離措置を伴わず、オミクロン株の相次ぐ流入を招くなど事実上機能しておらず、見直しが避けられない状況だ。
なお10月単月の「留学」新規入国者は1522人で、2月以降では最も多かった。出身国(地域)別では、中国158人、マレーシア129人、ベトナム 122人、インドネシア111人、タイ81人、韓国79人などが多い。9月までと比較すると、10人以上の入国留学生のがいたエリアが世界各地に幅広く分布し、フィリピン(64人)、バングラデシュ(76人)、アフガニスタン(62人)のほか、ガーナやエジプト、ケニアなどのアフリカ諸国も見られる。
一方、10月中の再入国留学生は2179人で、引き続き中国(1430人)と韓国(339人)が多数を占めている。
~「日本語」科目の平均点がここ数年で最高の250点に ~
11月に実施された日本留学試験(EJU)の全体状況が判明した。日本学生支援機構(JASSO)のまとめによれば、最終的な受験者は追試験も含めて日本国内が9547人、国外が4444人の、合計1万3991人となった。応募者数(国内外で2万1466人)に対する受験率は65%。
受験地別では国内が東京(5827人)、大阪(1114人)などが、また国外はソウル(2158人)、香港(639人)、釜山(512人)の順に多い。
11月EJUの結果は各大学等の2022年度及び23年度留学生入試における学力判定の指標となる。注目の平均点は、受験者数が最も多い「日本語(聴解・聴読解+読解)」が250点(満点比62・5%)となり、ここ数年の中で最も高くなっている。「日本語(記述)」は33・8点(同67・6%)だった。
「日本語」科目の得点分布を見ると、最も多かったのは210-219点(790人)と、230-239点(750人)の層だが、300点以上の得点者が全体の25%(3512人)に上ったことで全体的な平均点が押し上げられたとみられる。
また日本語以外の科目の平均点は、主に文科系学生の受験科目である「総合科目」が124・4点(同62・2%)、「数学<コース1>」が98・4点(同49・2%)で、理科系学生の受験科目では「数学<コース2>」が110点(同55%)、「理科」は平均点が高い順に生物68・4点(同68・4%)、物理56・6点(同56・6%)、化学54点(同54%)だった。
なお日本国内の受験者について出身国・地域別でみると、最多の中国が7629人で全体の8割を占めた。中国の他はベトナム(738人)を始め、韓国、インドネシア、香港、台湾がそれぞれ受験者数100人を超えている。
★米国・ロシアの全土を変異株指定国に追加
政府はここ数日で水際対策を再度見直し、「特に対応すべき変異株に対する指定国・地域」に米国とロシアの全土やポーランド、ジョージアなどを追加した。この内米国については、ニューヨーク州、ハワイ州、イリノイ州、マサチューセッツ州からの入国者及び帰国者に検疫所長の指定する宿泊施設で6日間待機を求め、他の州については3日間待機とした。新たな措置はいずれも25 日から26日にかけて断続的に適用される。
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~名古屋入管のスリランカ人死亡事案を受け 入管庁が取組状況を公表~
名古屋出入国在留管理局で収容中のスリランカ人女性が死亡した事案を受けて、出入国在留管理庁は調査報告書で示された改善策に沿う形で、組織や業務の見直しを進めているが、このほど現時点における取組状況を公表した。医療スタッフの増員、被収容者の健康状態に関する情報共有、診療における多言語対応など、従来の診療体制を相当程度見直す内容が盛り込まれている。今後、再発防止に向けた実効性をどう高めるかが大きな課題となりそうだ。
入管庁が公表した情報によれば、すでに実施済みの取組では、新規収容者の健康診断、救急対応マニュアルの作成、非常勤医師の1名から4名への増員といった医療体制強化に関わるものが多い。先の死亡事案では、被収容者の健康状態について省庁内で正確に情報が共有されていなかったことを踏まえ、幹部職員と現場職員及び医療従事者との間に、定例会など意思疎通のメカニズムも設けた。またコミュニケーションに制約を伴う外国人向け対応を念頭に、庁内や外部で診療を受ける際には原則として通訳を手配し、緊急時等で間に合わない場合は翻訳機器の活用も指示した。
一方、現在取組中の項目の中には、収容中の体調不良者に対して仮放免を柔軟に行う方針も盛り込まれた。スリランカ人の事案を受けて、調査報告書は仮放免判断に係わる新たな運用指針の策定などを求めており、入管庁では同指針策定までの暫定措置として、体調不良者の柔軟な仮放免について指示文書を出したという。仮放免に当たっては民間団体との連携も必要なことから、現在対象として適切な団体の情報収集も進めている。今後はさらに、体調不良者の収容継続の可否を、本庁側がチェックする仕組みづくりも課題となりそうだ。
★岸田首相、外国人の新規入国再開に慎重姿勢
~「当面の間」 入国停止の延長を正式表明~
岸田文雄首相は21日夕方の記者会見で、年末までの1か月間を目処としてきた外国人の新規入国停止に改めて言及し、「オミクロン株の感染力、重症化リスクなどに関する科学的な評価がいまだ確立していない。このため、年末・年始の状況を見極めつつ、当面の間、水際対策を延長することとした」と述べた。併せて関連情報の収集に全力を挙げることや、オミクロン株の濃厚接触者については自宅待機ではなく、14日間の宿泊施設待機を要請するなど、政府として感染封じ込め策を強化する方針も明らかにした。
首相の会見では、欧米メディアの記者から、この1年8か月間、日本への留学予定者らがほとんど入国できておらず、入国待ちの人たちの我慢も限界に達しつつあるとの指摘があり、長期間の隔離や毎日のPCR検査など厳格な対応を条件に入国を認めるのは物理的に不可能なのかという質問が出た。これに対して岸田首相は「いろんな対応が考えられる」と直接の言及は避け、「現状ではまだオミクロン株という未知のリスクの実態が科学的に確認できていないので、慎重の上にも慎重でなければならない」として、「G7の中で最も厳しい水際対策」を継続する方針を重ねて繰り返した。今後の受入れ再開見通しについても、オミクロン株の実態や世界の感染状況が確認されれば、「科学的な見地から専門i家の意見も聞きながら、具体的な対応を考える可能性がある」と消極的な発言に終始した。
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~留学生は成績・出席率等の要件を撤廃 大学等が総合的判断で対象者を選抜~
令和3年度補正予算が国会で成立したことを受けて、文部科学省は新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に困窮している学生を対象とする緊急給付金の事業を正式に開始した。全国の大学・高専・専門学校や日本語教育機関などで学ぶ約67万人に1人10万円の支給を想定しており、外国人留学生も受給対象となる。
同制度が前回実施された際には、留学生については基本的な申請要件に、成績や授業の出席率、仕送り金額等も含まれていたが、今回の要件にはこれらは入っていない。文科省関係筋は取材に対して、対象となる申請者の要件を一部変更し、改善を図ったが、各教育機関が対象者を総合的に判断する点は前回と変わらないと語った。
今回の対象者は、原則として自宅外で生活し家庭から多額の仕送りを受けていないことや、コロナ禍でアルバイト収入に影響を受けている学生がベースとなる。同時に現在何らかの奨学支援制度を活用していることも要件に挙げられていて、文科省によると留学生の場合は「外国人留学生学習奨励費」を始めとして、民間の財団や地方自治体が運営する既存の奨学金の利用者等が該当するという。同省では今回の支援には学生の学びの環境を整える意味合いがあり、一過性の措置に止まらず、奨学金を含めた継続的な支援に繋げていく狙いがあるとしている。
なお対象学生の選定に際して上記はいずれも絶対条件ではなく、個々の留学生が抱える経済状況を各教育機関がそれぞれ判断した上で、対象者を選抜して構わないとのことだ。申請期限は来年1月21日までで、各教育機関が日本学生支援機構(JASSO)に推薦者リストを送付する。
★岸田首相、水際強化措置の延長を表明
岸田文雄首相は18日の会見で、日本政府が現在実施している水際強化措置について、「少なくとも年末年始の状況は見極めた上でその先について考えるべき」と語り、当面年末までとしていた期限を、さらに年明け以降まで延長する方針を示した。具体的な時期は明言しなかった。
留学生など外国籍者の新規入国は、先月29日の首相判断により再停止しており、延長方針で少なくとも年頭までは再開が見通せない状況となった。影響は日本語教育機関等の来年4月期生はもとより、すでに在留資格認定証明書を取得済みで入国待ち中の留学予定者を中心に幅広く及ぶ。
現行措置の判断基準や指標は示さず
首相はこれに先立つ17日の会見では政府のオミクロン株対応について「G7で最も厳しい水際対策を即座に講じ、慎重な上にも慎重な対応に努めてきた」とした上で、一連の厳格な水際措置は「オミクロン株に関する情報が少しでも明らかになるまでの時間を稼ぎ、必要な準備をしていくための臨時異例の措置」と位置づけていた。一方で、「臨時異例の措置」を延長・終了させる上の判断基準やベースとする情報については示しておらず、国際的な往来再開に向けた先行きは不透明なままだ。
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