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2022-09-01 14:46:00

〜来年度予算の概算要求:留学生や日本語教育関連の概要が判明〜

 

文部科学省は令和5年度予算の概算要求で、「優秀な外国人留学生の戦略的な受入れ」経費として260億円を盛り込んだ。今年度予算比では2億円の減額要求で、片や日本人学生の海外留学活性化へ向けた支援強化には同15億円増の86億円を計上した。先に岸田文雄首相が「『留学生30万人計画』を抜本的に見直し、留学生受入れだけでなく送り出しを加えた、新たな計画」の策定を指示したことも反映し、バランスに腐心した内訳となっている。

 

この内、受入れ関連では、外国人留学生向けの奨学金制度で学習奨励費(留学生受入れ促進プログラム)が今年度より308人分減らされて6746人分を見込むが、国費外国人留学生は現行枠(11344人)がそのまま維持された。奨学金関連の対象者が絞られた一方で、コロナ禍により急激に落ち込んだ留学生の国内就職立て直しを主眼に、「留学生就職促進プログラム」予算を9千万円増やし16千万円としたほか、「高度外国人材育成課程履修支援制度」として新規1千人分を計上している。日本学生支援機構(JASSO)関連では今年度比で、運営交付金が1億円、施設整備費補助金が21千万円、それぞれ減額された。

 

また上記とは別に、「日本語教育の質の向上」関連で、日本語教師の新たな資格試験システムの導入や試行試験等の実施経費として同18千万円増の23100万円が、また日本語教師の養成と現職日本語教師の研修事業向けに同1900万円増の31千万円が、いずれも盛り込まれた。

 

高等専門学校関連では、引き続き、「KOSEN(高専)」の海外展開に向けた予算が組み込まれた。「重点3か国」と位置づけるモンゴル、タイ、ベトナムへの高専制度導入支援や、留学生の日本語教育体制の強化を目指すとしている。

 

★在留カードとマイナンバーカード一体化へ システム改修費を要求

 

一方、法務省は令和5年度予算に関連し、「外国人材の受入れ・共生社会の実現に向けた取組の推進」として、今年度比40億円増の2714700万円を概算要求した。外国人在留インフォメーションセンターの拡充や、ウクライナ避難民への相談対応のほか、日本人を対象とした外国人との共生に関する意識調査の経費も含まれる。「デジタル化の推進」関連では、在留外国人が所持を義務づけられている在留カードとマイナンバーカードとを一体化し、利便性の向上を図るとして、必要となるシステム改修の費用も盛り込んでいる。また日本企業の海外進出などに対応し、法令の外国語訳を推進する考えも打ち出した。葉梨康弘法務大臣は30日の閣議後会見で、「2025年までに千本以上の英訳法令の公開を目指す」と述べ、ネイティブアドバイザーや法令翻訳のコーディネータ―のほか、AI翻訳についても充実を図るため、今年度予算で増額を目指す方針を明らかにした。

 

★「特定技能」12分野の受入れ上限数を閣議決定

~コロナ禍の影響踏まえ、分野ごとに大幅見直し

 

政府は831日、在留資格「特定技能」の運用に関する見直し方針を閣議決定した。新型コロナウイルス感染症の拡大で経済情勢が大きく変化していることを踏まえ、ほぼ全ての分野について外国人の受入れ想定数を見直した。

 

新たな運用方針によれば、「特定技能」の受入れ対象となる全12分野の内、今回受入れの上限数が最も増えるのは「飲食料品製造業」で、53200人増の87200人。同分野における都道府県別の有効求人倍率が、地域によっては57倍に高止まりしており、コロナ禍の影響を考慮しても、なお人材ニーズが不足すると見込んだ。また今春に3分野を統合した製造分野の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」も、18300人増やして49750人とする。「農業」分野については、36500人の現行枠をそのまま維持する。

 

これらを除く9分野に関してはいずれも、現行の受入れ上限数が削減された。減少幅が特に大きかったのは「外食業」(22500人減の30500人)と「ビルクリーニング(17千人減の2万人)」、「宿泊(1800人減の11200人)」の3分野。これらはコロナ禍による需要減少が特に甚大な業種であり、海外人材の来日にも支障が出ていた。

 

また分野別ではこれまで最多の受入れ数が見込まれていた「介護」も9100人減の5900人となり、急増した「飲食料品製造業」を下回った。

 

さらに、建設(6千人減、34千人)、漁業(2700人減、6300人)、造船・舶用工業(2千人減、11千人)、航空(900人減、1300人)、自動車整備(500人減、6500人)の5分野も、上限数が相当割合減る形となった。

 

政府は上記の受入れ上限数について、当初、大きな経済情勢の変化が生じない限り、令和63月までを目途とするとしていたが、今回大幅な変更に踏み切った。なお、特定技能の受入れ総数は345150人で従来と変わらない。分野ごとの新たな上限数は当面、来年末を期限とする。

 

※日本語試験の方式も柔軟運用が可能に

 

一方、特定技能外国人の日本語能力を測る試験としては、これまで「国際交流基金日本語基礎テスト」と「日本語能力試験(N4以上)」の2試験が全分野において採用されてきたが、出入国在留管理庁では、先に文化審議会国語分科会で「日本語教育の参照枠」が取りまとめられたことにより、各日本語試験団体が実施する日本語試験についても、共通の指標による評価が可能になったと判断。今後は必要に応じて柔軟に、他の日本語試験を追加できるよう規定を整備する方針も固めた。 新たな日本語試験の追加については、試験実施機関からの申請を受け、分野を所管する省庁が法務省の確認なども踏まえ判断するという。

 

在留資格「特定技能」は、外国人留学生が日本の教育機関を修了後、日本で就職する際の受け皿ともなっていて、今回の運用見直しは一定の影響を与えそうだ。

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