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日本語教育に関する文化庁報告書 大学に関連するポイントを整理
文化庁の調査研究協力者会議は「日本語教育の推進のための仕組みについて」と題する報告書を正式に公表した。先月末明らかになった原案に沿った内容で、新たに創設される「公認日本語教師」資格と、日本語教育を実施する機関の「類型化」について一定の方向性が打ち出されている。今後は同報告書に基づき、新たな日本語教育制度の詳細が検討されていく見通しだ。
(既報「原案」に関する概要は下記本紙バックナンバー2021.7.30号参照。)
一連の検討プロセスでは、「公認日本語教師」資格の取得要件や試験内容がどうなるのかや、日本語教育機関の「類型化」に関する制度設計が大きな関心を集めているが、それらとは異なる観点から注目されるのが、大学における日本語教育との関わりだ。大学の学歴や日本語教師養成課程、あるいは既存の留学生別科が、新制度の中でどう位置づけられるかは、今後の日本語教育の展開において重要な意味あいを持つ。今回の報告書から、大学と直接的に関連する内容を抽出すると、主に下記の3つのポイントに集約される。
①大学等の日本語教師養成課程の扱い
報告書では、「公認日本語教師」の資格取得に必要な教育実習を行う「指定日本語教師養成機関」として大学等も想定。先に文化審議会国語分科会が「必須の教育内容」と定めた50項目を履修・修了すれば、資格試験の内、筆記試験の一部と面接を免除する方針を明文化している。大学の日本語教育に関する養成課程については、26単位以上(専門学校等の日本語教師養成研修は420単位時間以上)の取得により免除対象とした。ただ具体的な制度づくりにあたっては、各大学ごとに教育内容が必ずしも一律ではないことに留意する必要性に言及したほか、すでに同課程を修了後に相当程度経過した者が受験する際の取扱いについても、今後検討を要するとしている。
②資格取得要件としての大学学位の扱い
当初、令和2年3月に国語分科会が示した報告書においては、「日本語教師には幅広い教養と問題解決能力が必要」との理由から、新たな日本語教師資格の取得要件には「学士以上の学位の取得」が含まれていた。だが今回の調査協力会議による報告書では、これら能力について「必ずしも大学・大学院のみで培われるものではない」と述べ、「試験等を通じて一定の知識・技能を有しているか確認」することにより担保できるとして、学士以上の学位を「公認日本語教師」の資格取得要件にはしない方針を打ち出した。そもそも同資格が内閣提出法に基づくいわゆる「名称独占資格」を想定していて、類似の国家資格で学士以上の学位を取得要件としている資格がないことも背景にあるという。
③大学別科の扱い
一方、日本語教育を実施する機関の「類型化」を巡る議論では、多様な学習対象者を念頭に、職務や評価項目の違いから、「留学」、「就労」、「生活」の主要3類型に分類した。このうち類型「留学」を担う機関に想定されるのは「法務省告示日本語教育機関」としたが、焦点の一つとなっている大学の留学生別科の扱いについては、今後「個別の必要性に応じ、段階的に検討する」として対応を留保した。
なお類型「留学」の主体となる機関に対する審査項目(案)には、コース設定、授業科目、教員数、教員要件、教材、第三者評価等、既存の法務省告示基準とほぼ同様の評価項目が挙がっており、双方の基準の連携や接続も今後検討される見通し。また全ての類型について、移行期間経過後には「一定数以上の公認日本語教師の配置を必須とする」方向性が打ち出されている。
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※関連記事(バックナンバー:「留学生新聞ニュース」 2021.7.30号より)
★「公認日本語教師」資格の大まかな方向性を提示
~文化庁の調査研究協力者会議が報告案公表
国家資格の創設に向けた検討が進められてきた「公認日本語教師」について、制度のおおまかな骨格が固まってきた。文化庁の調査研究協力者会議は7月29日の会合で、日本語教育の推進に関する新たな報告書を配布したが、この中で同資格の実施方法や運営主体、試験内容等に関する案が示された。
同案によれば、試験は文部科学大臣の指定する法人が実施主体となり、全国で年1回以上、筆記方式にて実施する。筆記試験の内容は、①日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する試験、②現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する試験、の2つを行い、さらに資格取得にあたっては教育実習の履修・修了も求める。教育実習は大学や専門学校等、文部科学大臣が指定した日本語教師養成機関で行い、同養成機関の履修者は、例えば大学の場合26単位以上の取得により教育実習と筆記試験の一部(上記の内①) が免除される仕組みが想定されている。
なお「公認日本語教師」の取得にあたっては大学学士以上の学位を取得要件とはせず、年齢、国籍、母語も問わない。また取得した同資格に関しては更新講習の受講は求めず、各自が知識や技能向上を目指して自分に合った研修を受講するとしている。
一方で、現職日本語教師が同資格の取得を希望する場合には原則として、筆記試験合格と教育実習の履修・修了が必要としつつ、「教育の現場における実践的な資質・能力が担保される者に関しては教育実習の免除などの配慮を検討する」とした。
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