インフォメーション
〜政府、私費留学生には配慮ないまま〜
松野博一官房長官は17日午前の会見で、当面の水際対策について、一部の国費留学生に限り入国を認める方針を明らかにした。対象は卒業や就労まで1年未満で、「入国できないことで卒業時に支障を来すことが懸念」されると判断した87名に限定。「必要な防疫措置と受け入れ準備が整っている」ことも条件にする。同長官は「人道上、国益上の観点から必要な対応をとる」とした岸田文雄首相の先の発言を繰り返したが、同様に卒業・進学を間近に控える私費留学生への対応には一切言及せず、「引き続き、個別の事情を勘案しつつ、必要かつ適切な対応を進めていく」と従来の見解を述べるにとどめた。
【社論】
差別的な入国者「選別」をやめ 待機学生の受入れロードマップ提示を
※中長期的な日本離れの加速も
外国人のみを狙い撃ちにした日本政府の水際対策に対してはSNS等で、国内外の留学予定者や教育機関関係者だけでなく、経済人からも批判や見直しを求める声が挙がっており、徐々にうねりとなりつつある。ツイッター上では、《japantravelban》や《開国しなさい ニッポン》、《令和鎖国》のほか、《日本留学詐欺》のハッシュタグも拡散されるようになり、岸田首相に直接メッセージを送る留学生らも後を立たない状況だ。
しかしながら岸田政権は感染・防疫対策の面からも科学的根拠に乏しい入国禁止策にひたすら固執したままだ。現下の状況がさらに長期化すれば、親日・知日派とされる学生らも嫌日へと転じ、中長期的に海外の若者らの日本離れが加速する事態も現実味を帯びる。新経済連盟の三木谷浩史代表理事は先に、ビジネス上必要な人材に加え、留学、家族滞在等の在留資格による新規入国も同様に停止状態が継続していることにより、「日本が排他的な国との認識が広がれば、中長期的にイノベーションの阻害要因にもなりかねない」と政府に早期の往来再開を求める声明を発表した。
※私費留学生も「日本の国益」を体現している
すでに国費留学生については、日本政府は昨夏までに少なくとも千人以上の入国を「特段の事情」で認めてきた。オミクロン株に関する科学的な知見や主要各国の水際対応がほぼ出揃いつつあるこの場に及んで、受入れはまたしても一部の国費生のみとし、私費留学生を中心とする9割以上の対象者を明確な基準もなく締め出し続けるのは、責任ある受入れ大国として筋が通らない。なけなしのお金と時間を費やして日本を選び、コロナ禍でも来日を長期間待ち続けた私費留学生もまた首相が言う「日本の国益」に叶う存在であることは論を待たず、何よりも日本での活動を認める在留資格認定証明書を国としてすでに交付してきたという重い事実を踏まえた対応を求めたい。世界を相手にこれ以上、理不尽かつ差別的な入国者「選別」の上塗りを繰り返せば、やがては日本自体が選ばれなくなることに、まず政策決定者自身が率先して気付くべきだろう。
※未入国待機中の留学生は15万人近く
河野太郎自民党広報部長は17日、文部科学省からの情報として、現在入国待機中の留学生数は、「国費留学生(大学等)約960人、私費留学生(大学、高校、日本語教育機関等)約14.6万人に上る」とした上で、今後の受入れは「緊急性など個別の状況を勘案しながら、順次検討」される見込みだとツイートした。
日本政府は私費留学生など未入国のまま待機中の外国人について、受入れに向けたロードマップを直ちに示す必要がある。
★日本語教育機関6団体が留学生受入れ再開の要望書を提出
日本語教育機関の関係6団体は先週、出入国在留管理庁と文部科学省に対し、留学生受入れ再開に関する要望書を提出した。
具体的な要望事項には、①3月末までに待機学生が入国できるよう私費留学生の入国制限を緩和する、ことをはじめ、②今年4月に大学や専門学校等へ入学する学生の入学時の在留資格認定証明書(COE)再申請を免除するなど入国上の便宜を図る、③日本語学校に在籍できる通算期間の延長特例(2年超え容認)を継続する、④適正校の選定に際してコロナ禍による在籍者数減を考慮する、⑤入国する留学生を困窮学生向け緊急給付金の対象に加え、待機費用を支援する、等が盛り込まれている。
6団体は昨秋、「審査済証」による新規来日者の受入れ再開後にも、入国申請の前倒しなどの要望を行っていたが、程なくして政府がオミクロン株を理由に入国の再停止に踏み切り、事態は振り出しに戻った形だ。今回の要望書では、入国制限の延長に次ぐ延長で留学予定者のキャンセルが更に増え続け、日本語教師の雇用も失われるなど、日本語教育インフラが崩壊の危機に瀕していると直訴。「待機留学生や日本語教育機関は、もはや限界に達してきている」として、政府に迅速な対応を求めている。
★12月の新規入国外国人は前月比75%減
出入国在留管理庁が明らかにしたところによると、昨年12月の1ヶ月間に日本へ入国した外国人の総数は2783人と前月より75%減少した。この内2777人が「特段の事情」によるもので、11月にいったん開始された審査済証による新たな受入れスキームでの入国者はわずか6人だけだった。政府は同月30日より外国人の新規入国を再停止していて、この6人は停止前後にギリギリで入国できたケースとみられる。また外国人の再入国者は2万1002人で、前月とほぼ変わっていない。
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