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岸田文雄首相は5日、訪問先の英国金融街シティにおける講演で、日本政府の水際対策を来月から他の主要7か国(G7)並みに緩和していく方針を表明した。首相は、海洋国家である日本が「世界と繋がり、人・モノ・カネ・デジタルが自由に往来することで成長してきた」とした上で、2月末まで自ら行ってきた鎖国的な水際対応に触れ、「昨年末、オミクロン株の世界的拡大を受けて水際対策を強化したが、それは国内への流入をできるだけ遅らせ、医療提供体制確保やワクチン接種を進めるために必要なことだった」と妥当性を改めて強調した。
さらに首相は「世界的に見ても、日本のコロナ対応は成功している」との認識を示し、「現在では大幅な(水際)緩和を実現し、6月には他のG7諸国並みに円滑な入国が可能となるよう、水際対策をさらに緩和していく」とも述べた。事後の記者会見でも「水際対策を含めコロナ対策を段階的に見直し、日常をさらに取り戻していきたい」との考えを示した。
一方、同講演で首相は「新しい資本主義」実現のための政策に言及し、いわゆるスタートアップ支援で、海外の一流大学の誘致を含めた「スタートアップキャンパス」の推進を改めて打ち出した。
★「ファストトラック」の事前手続きが到着6時間前まで可能に
日本到着時の空港検疫で求められる提出書類の一部を、アプリを通じて事前登録することにより、入国時の検疫手続きが簡素化される「ファストトラック」について、厚生労働省はさらに利便性を向上させる取り組みを始めた。これまでは「日本到着予定時刻の16時間前」までに事前審査の申請を行う必要があったが、事前審査の締め切り時間が「日本到着予定時刻の6時間前」まで短縮された。新たな措置はすでに先月27日より実施中だという。
「ファストトラック」では入国予定者本人が、入国者健康居所確認アプリ(My SOS)を通じて、事前にWEB上で質問票や誓約書に必要事項を記入し、出国前72時間以内の検査証明書とワクチン接種証明書の有効性も確認することができる。登録内容は検疫手続確認センターが事前チェックし、確認が完了するとアプリ画面が赤色から緑色に変わる。空港で同画面を検疫職員に提示することにより、入国時の手続きがスムーズになる仕組みだ。
現在、同措置の対象となっているのは、羽田、成田、中部、関西、福岡の国内5空港となっている。
★日本式制度を導入したタイの高専 岸田首相が視察
大型連休中に東南アジアを訪問した岸田文雄首相は5月2日、日本の円借款により設立・運営等の支援を行っているタイの「キングモンクット工科大学ラカバン校高等専門学校(KOSEN KMITL)」を視察し、教員や学生らと意見交換を行った。
外務省によれば、タイでは専門性を備えた技術者の養成を視野に、一部教育機関において日本の高専をモデルとする教育システムを導入しており、2019年にKOSEN-KMITLが開校の運びとなった経緯がある。さらに翌2020年には、同工科大学のトンブリ校高等専門学校(KOSEN-KMUTT)も開校し、現在の学生数は両校で計400名に上るという。この間、日本からタイ高専への教師派遣や、タイから日本の高専への留学等に対して円借款を通じた支援を実施するなど、タイが必要としている高度人材育成を支援してきた。
同時に日本政府はタイを海外、特に東南アジアにおける戦略拠点として最重視しており、現地でビジネスを展開中の日本企業にとってはエンジニアを始めとする優秀な人材確保が喫緊の課題だ。政府の令和4年度予算でも、「KOSEN(高専)の海外展開と国際標準化」を旗印に、日本の高専制度導入への支援が盛り込まれており、タイはベトナム、モンゴルも含めた重点対象3か国の一つとなっている。同枠組みでは、日本語教育体制の強化を通じた日本への留学生受入れ拡充も打ち出されていて、今後の展開が注目される。
★元横綱設立の「新モンゴル日馬富士学園」を視察
一方、同じく連休中にモンゴルを訪問した林芳正外務大臣は5月1日、大相撲の元横綱・日馬富士が設立した「新モンゴル日馬富士学園」を視察し、日馬富士理事長、ガルバドラフ学園長らと懇談した。外務省によれば、同学園は2018年に現地で開校した日本式教育を行う学校で、小中学校のカリキュラムを整備しており、現在の在校生は約1600人に上るという。今年度からは日本への留学生も送り出す予定で、近く留学予定の生徒による林氏への花束贈呈も行われた。
折しも2022年は日本とモンゴルの外交関係樹立50周年の節目となる「青少年交流推進年」にあたり、人的交流の活発化に期待が集まっている。この日は歓迎行事で同校生徒の校歌斉唱や民族楽器・馬頭琴による演奏が披露されたほか、外務大臣と理事長らとの懇談においては教育分野の交流強化に関しても意見交換が行われたという。
※「人材育成奨学計画」で16名のモンゴル行政官を日本留学へ招聘
さらに日本とモンゴルの間では、日本留学を通じた新たな人材育成の枠組みを推進することも決まった。各国の将来を担う若手行政官に日本の大学院等へ留学してもらうことにより、現地政府の人材育成や統治制度構築を支援する「人材育成奨学計画」の枠組みで、日本政府は令和5年度に最大16名のモンゴルの若手行政官等を日本へ招く方針を表明した。留学生らが、日本の大学院で博士や修士を取得できるよう支援する。現地を訪問中の林外務大臣が1日、バトムンフ バトツェツェグ・モンゴル外務大臣との間で交換公文に署名した。
★日・伊がワーキングホリデー協定に署名
日本政府は5月2日、イタリア政府との間で、ワーキングホリデー制度に関する協定に署名した。通称「ワーホリ」として知られる同制度は双方が相手国の国民に対し、入国後1年間、休暇目的の滞在を許可し、滞在期間中の旅行資金を補うための就労も付随的に認めるもの。相手国との青少年交流や相互理解の促進に寄与するとされ、日本はこれまでに26の国・地域との間で協定を交わしている。
今回の日伊間の協定では、就労可能な期間について、イタリアからの来日者は1年間「休暇の付随的な活動として就労許可なしに就労することを認める」とされているが、日本からイタリアに行く人の場合には、同条件で就労が可能なのは「合計で6箇月を超えない期間」とされている。滞在中の在留資格変更や在留期間の延長はできない。
なお一般社団法人日本ワーキングホリデー協会によれば、ワーホリ協定国・地域の中では現在、台湾や香港、豪州、ドイツなど、7の国・地域が日本からの渡航者に対して何らかの入国制限措置を採っているという。入国後の行動制限措置が求められる国・地域も19に上る。また日本政府も、ワーキングホリデー査証の申請を現時点で原則として受け付けていない。新型コロナウイルス感染症に対する水際対策を世界各国が緩和し始める中、人的往来の正常化へ向けた動きが加速することへの期待も高まっている.
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