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~中教審・大学院部会、近く中間とりまとめへ~
中央教育審議会(文科大臣の諮問機関)は先月開いた大学院部会で、中間とりまとめ案の策定に向け、人文科学・社会科学系の大学院教育に関する方向性について議論を行った。末松信介文部科学大臣は8月2日の会見で、「不確実性の高い現代において、新たな生き方の視点や価値観を提供する人文科学や社会科学分野の重要性は一層高まっている」一方で、同分野を修了した高度人材の日本におけるキャリア形成については「未だ限定的だ」と述べ、その支援は「大変難しい課題だと認識している」と語った。
末松大臣は大学院部会において提起された内容として、▶大学院修了者の能力や活躍に関し、社会と大学、及び学生自身との間で相互理解が進んでいない、▶幅広いキャリアパスを念頭に置いた大学院教育や組織的な就職支援の枠組みが、十分に整備されていない、等の問題点を紹介。特に博士課程においては、学生のテーマに合致する研究指導の欠如、学位取得に要する時間の長期化(オーバードクター)等の課題が指摘されているという。
文科省では、近く予定される部会の中間とりまとめを踏まえ、人文科学・社会科学系分野を修了した大学院生のキャリアパス拡大に向けて、具体的な方策の検討を進めていきたいとしている。
※来日者の「一番人気」分野 留学生向け就職支援にも直結
人文科学・社会科学系は、来日する外国人留学生の間でも常時、専攻者が最も多い分野で、高等教育機関で学ぶ留学生でみると、社会科学分野が全体の4割近く(約7万6千人)を占め、人文科学分野(約3万2千人)を合わせれば半数を超える(2021年5月現在)。また日本学生支援機構(JASSO)のまとめによると、2020年度に大学院を修了した留学生の内、日本国内における就職者の比率は、人文科学分野が22.5%、社会科学分野が25.9%で、このほかに出身国や第三国で就職した人がそれぞれ人文科学で9.9%、社会科学で22.9%いる。ちなみに同統計は修士、博士両課程の修了者が含まれていて、修士課程修了者の中にはさらに博士課程へ進学した人もいるため、上記はいわゆる「就職率」とは異なる。いずれにせよ、実数が最も多い同分野専攻者のキャリアパス拡大に向けた支援は、留学生の就職支援にも直結する課題と言える。
★医療逼迫の回避へ 証明書の取得に対する配慮を呼びかけ
新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が高止まりし、医療機関や保健所の業務が逼迫していることを踏まえ、文部科学省は陽性者や濃厚接触者等が療養を開始する際や待機期間を終えて復帰する際に、従業員・学生等に対して追加の検査結果や陰性証明書等の提出を求めないよう、配慮を要請している。所管する大学、専門学校等教育機関等に対して、すでに文書で通知した。政府の対策本部が先月29日、医療の逼迫を回避するための対策を実施するよう要請していた。
同通知では、やむを得ず証明書を求める必要がある場合でも、教職員や学生らが自分で撮影した検査結果の画像や療養証明書で代替するよう求めている。
★入国したウクライナ避難民1600人 支援大学も50を超える
日本政府がウクライナから受入れた避難民の総数が、7月時点で1600人を超えた。出入国在留管理庁のまとめによると3月2日以降7月31日までの累計は1660人となっていて、この内、すでに出国済みの者を除く1607人の内訳は、在留資格別で「特定活動」が1363人、「短期滞在」が122人、「その他」が122人。入国後の在住地域(都道府県)別でみると、東京都が322人で最も多く、神奈川県(110人)、福岡県(104人)、大阪府(91人)、兵庫県(77人)、千葉県(71人)、愛知県(68人)、埼玉県(50人)なども相当数を受入れている。
避難民の中には日本の教育機関で就学を希望する子女も一定数に上り、大学等の中にはウクライナ籍学生向けの支援策を打ち出すところが増えている。文部科学省のまとめによれば7月30日時点で、該当する支援対象者を募集中の大学が、国立12大学、公立5大学、私立18大学の計35大学ある。これらのほかに、すでに募集を終了または停止した大学が22大学あり、両者を合わせると50を超える大学がウクライナ避難民支援に名乗りを上げた形だ。
また日本語教育機関の中で、学費免除やオンライン授業の無料提供など、何らかのウクライナ避難民向け支援を実施しているところも、7月15日現在、全国で66校に上っている。
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