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先の通常国会で成立した「日本語教育機関認定法」に盛り込まれ、来年度からのスタートが見込まれる「認定日本語教育機関」に関して、国が制定を目指す認定基準の概要が明らかになった。文化庁国語科がこのほど、関連する省令や告示等の案を示し、同案はすでに民間からの意見聴取手続きに入っている。
新たな基準案では留学、就労、生活の分野ごとに、異なる基準に基づき審査を行うとしていて、それぞれの概要を定めている。この内、留学生向けの日本語教育を担う「留学」関連でも、教職員の体制や日本語教育課程等について、「認定日本語教育機関」として認める上での具体的な基準案が示された。
※「留学」分野の認定日本語教育機関 具体的な基準案は?
まず教員体制では、「認定日本語教育機関」の教員数を現行の法務省告示基準と同じく、課程の収容定員20人につき1人以上(各機関の最低数3人)、「本務等教員」を同40人につき1人以上(同、最低数2人)と定めた。ここでいう「本務等教員」とは、従来の専任教員に相当するが、新基準では、日本語教育課程の編成や認定日本語教育機関の運営について責任を担う専任教員か、又は本務として同等以上の業務を担当する教員と規定している。具体的にどの教員が「本務等教員」に該当するかは、業務内容等から総合的に判断される。学校の校舎面積に関する基準は現行ルールと同じだが、各校舎間の距離を概ね800m以内、かつ3か所以内と規定した。
一方、日本語教育課程の中身については、各課程が目指す「留学」の目的に沿った日本語能力を習得させることを目指し、原則として日本語教育の共通参照枠(CEFR)B2以上の課程を1つ以上置くことや、修業期間を1年以上(要件を満たす場合は6か月以上も可)とすることを定めた。同時に日本語課程全体の中で、「聞く」、「読む」、「話す(会話)」、「話す(発表)」、「書く」のすべてを盛り込み、授業はこうした担当能力のある教員が、適切な教材を用いて行うとした。
授業時間は1週間当たり20単位時間以上、年間760単位時間以上(1単位時間=45分以上)としており、いずれも現行の法務省告示基準と変わらない。ただ、修了要件として、所定の授業科目を履修させるだけでなく、「試験の合格等の適切な要件」を設けることも求めている。加えて、各機関が認定基準の教育要件を満たすかどうかは、今後策定される「コアカリキュラム」を参照の上で判断するとしていて、よりハードルが高まりそうだ。
コロナ禍で需要が高まった遠隔授業に関しては、感染症の拡大等により対面授業が困難な場合には、臨時的に実施できることが明文化された。
また「認定日本語教育機関」の収容人数に関しては、現行の法務省告示機関に「現有の収容定員数」を認めるとしたほか、新規の教育機関は当初100人以下とし、以後は要件を満たせば、隔年ごとに1.5倍まで増員を可能とした。(要件は、実員が定員の8割以上いることや生徒の在留継続に必要な支援体制が適切であること等)。現在は増員申請に際し、「過去1年以内に増員を行っていないこと」が要件になっているが、新基準では増員が最速で2年に1回となる。
各機関は、「1年課程」「2年課程」など設置する課程ごとに、入国時点で各生徒がどの課程に入るかを確定させる必要がある。また認定基準上の入学時期は、これまでの「年2度以内(やむを得ない場合は年4度以内)」が、「年4回以内」となる。新規校等の入学時期が、広がることになりそうだ。
基準案では、「認定日本語教育機関」に対し、毎年1回以上の自己点検・評価のほか、文部科学大臣への定期報告を行う必要があるとした。報告内容には卒業・退学者、進学・就職者の状況等のほか、生徒の授業出席率や資格外活動の状況など、現在、法務省告示の日本語教育機関が報告を求められている内容も引き続き含まれている。
また焦点となっていた「認定日本語教育機関」で日本語教育を担当する教員の要件について、基準案は令和11年3月末まで5年間の「経過措置期間」を設定。新設される「登録日本語教員」の資格がない場合でも、所定の要件をクリアしていれば、当面は引き続き教員として勤務できるとした。
この具体的な要件としては、①日本語教員養成の420単位時間以上修了か日本語教育に関する大学の単位26単位以上を修得し、かつ学士・修士・博士等の学位を有する者、②日本語教育能力検定試験の合格者、③平成31年4月1日以降に、法務省告示機関、大学または文科大臣が別途指定の日本語教育機関で日本語教育に1年以上従事した経験者、のいずれかに該当する必要がある。
※大学等の日本語課程についても教員数等を規定
なお日本語教育機関の内、大学や専修学校等(日本語教育以外の課程を設置している教育機関)が設置する日本語課程の教員数について、新基準案では「日本語教育を実施するための基本組織を置くこと」を求めている。教員数を収容定員40人につき1人以上とするルールは一般の日本語教育機関と変わらないが、日本語教育課程以外の教員が運営の責任を担う場合には、収容定員40人以下の場合の最低数を1人(通常は2人)でも可とした。また最低授業時数(年間760単位時間)についても、大学や専門学校の場合、日本語教育課程以外の科目を履修させることにより、160単位時限を上限に減らすことができるとした。収容定員に関しては、一定の確認を経た大学に対し「実績を踏まえた定員数」を認めるとしている。
今回の基準案は現在、民間からの意見(パブリックコメント)公募を行っており、9月20日が締め切りとなる。
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