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2025-01-09 10:39:00

 

~厚労省「外国人雇用実態調査」で変わらぬ課題も浮き彫りに~

 

外国人留学生で、学業の傍ら日常的にアルバイトに従事している者の内、中国出身者の占める比率が1割を下回っている実態が、厚生労働省の調査から浮き彫りになった。一昔前は「留学生アルバイト」といえば中国出身者が大多数とのイメージが強かったが、来日留学生の多国籍化や本国の経済成長により、留学生の就労状況も大きく変化している。一方で、仕事上必要な日本語能力や困ったときの相談窓口など、就労に伴う課題は概ね従来と変わらないままだ。

 

厚労省が全国から抽出した9450事業所を対象に、令和59月時点で行った外国人雇用実態調査(有効回答3534事業所)によれば、日本国内の事業所で期間を定めずに雇われているか、または1か月以上の期間を定めて雇用されている「外国人常用労働者」の内、在留資格が「留学」の者は92054人だった。(注:抽出調査であるため、同数は実際の留学生アルバイト総数とは異なる。)

 

この内、出身国・地域別で最も多かったのはベトナムで、留学生の常用労働者全体の23.8%を占めた。最近来日者が急増しているネパールが12.8%で続き、中国(9.6%)は3番手となっていて、4番手のミャンマー(8.9%)とも大きな差はない。統計上、「中国」には大陸地区のほかに、香港とマカオの出身者も含む。他の常用労働者の中で日本での就労が主目的の在留資格においては、中国出身者が占める割合は「技術・人文知識・国際業務(以下「技・人・国」)」で22.8%、高度専門職では69.5%に達していて、これらとの比較でみると中国出身者の「アルバイト離れ」が鮮明となっている。

 

留学生の常用労働者を産業別にみると、宿泊業・飲食サービス業を含めたサービス業が、全体の半数を超える。卸売・小売業や教育・学習支援業も比較的多い。従事する職業別では「運搬・清掃・包装等」37.3%、「サービス職」18.9%、「販売」13.3%の順。雇用形態は、雇用期間の定めがあるものが65%を占めた。

 

来日前の日本国外における最終学歴別では、留学生の常用労働者中、高校卒者が6割近く(58.9%)を占め、大学卒者は約3割(29.6%)、専門学校・職業訓練校が6.1%だった。

 

※留学生は貴重な担い手として重宝も、日本語力のハードル高し

 

一方、雇用事業所側に外国人労働者の雇用全般に関する課題を挙げてもらった調査では、「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい(44.8%)」と「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑(25.4%)」との意見が多数に上る。片や外国人自身に日本語能力を尋ねたところ、留学生の常用労働者の43.5%は日常的な短い会話が、20.6%は身近な話題についての会話がそれぞれ可能と回答しているものの、「幅広い話題について自由に会話できる」人は7%に止まり、「技・人・国」や「高度専門職」(いずれも32%台)とは大きな開きがあった。日本語の読解能力を日本語能力試験(JLPT)のレベル別で分類してもらったところ、留学生の常用労働者はN3レベルが半数近く(45.7%)で、N2以上は4分の1弱に止まっている。

 

とはいえ、留学生の場合、本人が出入国在留管理庁から資格外活動許可を取得していれば、事業所側には雇用に際して在留資格申請等の手続きは必要なく、また一定程度日本での生活に熟練していることから、人手不足を解消する貴重な担い手として重宝されている側面がある。実際に、外国人常用労働者に就労上でのトラブルの有無を尋ねた設問では、仕事をする上でトラブルや困ったことがあると回答した留学生は5.7%で、「技・人・国(14.8%)」も下回り、在留資格区分別で「留学」が最も少なかった。ただ、就労上のトラブルの中身をみると、留学生は「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」との回答が該当者の約2割に上っており、相談先に関する情報の欠如も課題と言えそうだ。

 

なお、留学生の常用労働者中、国内外いずれかで転職経験がある人は23.1%で、この内日本国内で就労先(アルバイト先)を変更した留学生に限ると、該当者の半数(50.7%)が転職による賃金の変動はないと回答している。今調査では、雇用先事業所から留学生に支給される現金給与額の平均は、月額93千円(所定内実働時間72.7時間)だった。

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