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~外務省報道官「国際的な人の移動再開に繋がる重要手段」
新型コロナウイルスワクチンの公的な接種証明書(ワクチンパスポート)の交付が先月26日より各市区町村で始まる中、その国内的な活用方法が今後の焦点として浮上しつつある。欧米諸国等においては同様の陰性証明書を入国や国内移動等に際し求める動きが出始めているからだ。日本政府は当面、海外に渡航予定の人が相手国側に同証明書を提示することで、隔離や再検査等の防疫措置が緩和されることを念頭に置いており、日本国内での活用については検討段階とするに止めている。加藤勝信官房長官は先の会見で、これに関して「現時点では具体的に申し上げられる状況には至っていない」と明言を避けた。
現状ではワクチン接種そのものが日本国内では義務事項ではなく、あくまでも各自の判断で行うものであり、仮に接種を強要されるような状況になれば不当な差別につながりかねないことから、国内での活用には慎重な対応が模索されているとみられる。
一方、コロナ禍の影響が長期化する中で、入国制限等、水際対策の緩和に道筋をつけていくためには、ワクチン接種歴の有効活用が大きなカギを握るとする指摘も少なくない。外務省の吉田朋之外務報道官は先の定例会見で、「実態として、ワクチン接種証明が今後の国際的な人の移動の再開に繋がる、一つの重要な手段になり得る」との認識を述べた。
海外では英国政府が、同国の定めたワクチンプログラムの規定に基づいて接種を完了した米国と欧州連合(EU)からの渡航者について、入国時の隔離や検査を免除する方針をすでに表明済みだ。またシンガポールでは同国と同程度に感染が抑制されワクチン接種率が高い国・地域向けに、入国時の隔離を不要とする対応が検討されている。最も厳格な「義務付け」が視野に入っているのは米国で、複数のメディアによればバイデン政権は、入国する全ての外国人に対しワクチン接種完了を求める方向で調整中だという。
今後、諸外国における議論の動向などをにらみつつ、外国籍者の入国・再入国にいかなる形で海外の接種歴を活用できるのか、法務省や厚生労働省等を含めた関係省庁の間で、様々な検討が行われていくとみられる。ただ例えば接種証明書の提出により、入国時の検疫を緩和する場合でも、国・地域の線引きや、どのワクチンを対象とするかなど難題が多い。日本国内で感染第5波が爆発的に広がる中、具体的な検討までには相応の時間を要しそうだ。
※接種証明書が使用可能な国・地域は?
外務省によれば、日本の市区町村が発行する新型コロナワクチン接種証明書が使用可能な国・地域の数は8月3日時点で14に上る。イタリア、ドイツ、ポーランド、ブルガリア、トルコなど欧州諸国が多く、アジアでは韓国、香港と、タイの4島(プーケット島、サムイ島等)が含まれる。ただこの内、香港は香港IDを所持する「香港居民」のみで、日本国籍者は対象外。韓国は隔離証明書の発行に必要な書類として認められる扱いとなる。ただいずれのエリアに渡航の場合でも、日本帰国時には接種証明の有無に関わらず、14日間の自宅待機等、所定の検疫措置が求められる。
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