インフォメーション
自民党外交部会は2月1日、緊急性や公益性が高いとして文部科学省から示された計400名の留学生の入国を例外的に認める方針を了承した。部会関係者が明らかにしたところによれば、「特段の事情」で入国させる対象として、留学生、文化芸術、サッカー等スポーツ選手、量子コンピューターの科学技術者等について文科省側から説明があり、留学生400名の入国も部会において認められたという。この400名の中には、先般許可済みの87名に加え「今回も相当割合を占める(関係者)」とされる国費留学生が含まれているとみられる。
文部科学省の関係筋は『留学生新聞』の取材に対して、今回の措置は先月先行して許可された国費留学生87名に続くもので、2月末まで原則として新規入国が認められない中、初めて私費留学生が含まれる点に意義があると語った。
※私費は高校留学生が相当数 大学は国費が主体
一方、別の関係筋によれば、今回追加で認められる私費留学生の中には高校留学生が相当数含まれており、大学の受入れ枠は国が「公益性が高い(関係筋)」と判断した国費留学生が主体となる見通し。日本語教育機関の数はわずかに止まるという。
日本政府が現在、「特段の事情」による入国を容認する対象例として示しているのは、
*卒業・修了まで1年未満となり、入国ができないことで修了に支障をきたすことが懸念される国費留学生
*実習等が多くを占めており、早急な入国が必要な医学、生物学、芸術分野等の国費留学生
*卒業に向けた要請が強い高校2、3年生等
*日本語教育機関を年度内に修了後、令和4年4月に大学等へ入学予定の留学生
*その他、二国間交流プログラム等の国費事業への参加者、
となっている。
今後もさらに緊急性が高いと判断される留学生には入国が許可されることが見込まれる一方で、1日の自民党部会では「過度の緩和への慎重意見も出た」としており、本格的な緩和にはなお曲折が予想される。
★早大が外国人留学生数を公表
早稲田大学は2021年11月1日時点で在籍している外国人留学生数を明らかにした。学部が978名、大学院が1726名、日本語教育5名の計2709名で、うち95%の2580名が私費留学生。大学院生で正規生は修士1171名、博士471名となっている。
留学生の出身国・地域別では中国が1867名で全体の68%を占め、韓国(250名)、台湾(120名)、アメリカ(49名)、インドネシア(48名)、タイ(40名)、ベトナム(30名)などが多い。
なお上記は、いずれも有効な在留資格「留学」の所持者で、調査基準日においてその在留資格が有効であることが早大留学センターによって確認されている学生の数。休学中や海外留学中の学生、及び「留学」以外の在留資格を所持する外国籍者は含まれていない。
★鎖国の長期化が交換留学の一時停止へと波及
日本政府が海外からの留学生等の入国を原則停止し続ける中、日本人学生の国際交流にもじわじわと影響が出始めている。南山大学(愛知県名古屋市)の関係者は、同大学の協定校の一つから「日本政府が国境を閉じていて、このままいくとインバランスの問題が出てくるから、交換留学を一時止めたい」との連絡があったことを明かした。同関係者は「学生を海外に出すことを事実上許可する一方で、受け入れはしない日本政府の政策の結果はいろんなところに出てくる」と今後の影響を心配している。
また別の大学関係者は長引くコロナ禍により、海外からの交換留学生は「事実上3年続きで受け入れられないことが確定的となっている」と語った。提携先からは「日本からの交換留学生だけが留学可能な状況が何年も続いているのは不公平」との指摘も出ているという。日本政府による鎖国政策が更に長期化すれば、交換留学協定の見直しや、海外の留学希望者の他国への流出にとどまらず、日本語や日本研究そのものを敬遠する動きがさらに広がる事態にもなりかねない。
大学関係者からは、海外留学や現地フィールドワークへの参加が物理的に難しくなったことで、グローバルな学生交流や語学学習に対する日本人学生のモチベーションが下がっているとの指摘も出ており、双方向での悪影響が懸念される。
北米の日本研究者ら100名以上は先月、留学生や研究者の入国を認めるよう求める書簡を日本政府に送った。
*********************************************************
自民党の河野太郎・広報本部長は29日、自身の公式サイトで、在留資格認定証明書を取得しながら日本に入国できない留学生が約14万7千人いる現状を改めて取り上げた上で、現時点での対応状況に言及した。河野本部長は留学生の新規入国について「公益性や緊急性の観点から個別の事情を勘案」して認めるとしている政府の説明は「全く充分ではありません」と指摘。「入国を待っている学生達が、先を見通してきちんと計画を立てられるよう、開国の方針を早急に明確にするように求めています。」と政府に対応を促していることを明らかにした。
★昨年の来日外国人15万人止まり 鎖国の影響深刻
出入国在留管理庁によれば、2021年の1年間で新たに来日した外国人の総数は15万1726人で、前年に比べ95%減となった。この内、在留資格「留学」は同76%減り1万1651人で、留学生が日本で就職する際の主要な在留資格「技術・人文知識・国際業務」は同87%減の2532人、「特定技能1号」は同70%減の1093人。全ての新規入国者を出身国・地域別にみると、多い順にベトナム(2万4623人)、中国(1万9374人)、米国(1万3631人)、英国(5949人)、韓国(5500人)、フィリピン(5405人)となっているが、これら主要国は対前年比で軒並み7-9割強の減少と総崩れの状況だ。
日本政府は昨年1月以降、厳格な水際措置をほぼ通年で継続しており、影響が数字に表れた形だ。経済界はこうした状況に危機感を強めており、主要3団体の首脳らが政府に対し鎖国状態の早期解消を求めている。
★鎖国政策に沈黙続ける知事会 水際対策維持を提言
一方で全国知事会の新型コロナウイルス緊急対策本部は28日、再度政府への提言をまとめたが、水際対策については「世界各国・地域でのオミクロン株の継続的な増加を踏まえ、水際対策を維持する」とする従来方針を引き続き堅持した。各地域では留学生に加え、技能実習生など外国人が新規入国できないことに起因する就労人材の不足など弊害が様々な形で伝えられるが、各知事の間からは、政府の鎖国政策に異を唱える声は皆無に等しい状況となっている。
★オミクロン株流行地域からの入国者 待機7日間に短縮
政府は29日から水際措置を一部簡素化し、オミクロン株が支配的になっている全ての国・地域からの帰国者と入国者について、自宅又は宿泊施設での待機期間を10 日間から7日間に変更した。国内における濃厚接触者の待機期間短縮に合わせた措置で、現時点では全ての国・地域が対象。
なおオミクロン株以外の変異株流行地域は、自宅等待機期間が14日間となる。
★国大協、複数国立大が留学生選抜で連携も視野に
国立大学協会(国大協)は、2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度について基本方針を発表した。外国人留学生の受入れ拡大については、グローバル化の進展の中で「喫緊の課題」と位置づけ、一例として「複数の国立大学が連携して外国人留学生を選抜し、受入れ希望大学を調整するなどの外国人留学生受入れシステムの構築について検討」する考えに言及している。いわゆる「高大接続システム改革」において留学生選抜の在り方が議論されていない状況を踏まえ、国大協として検討の方向性を示した形だ。
***************************************************