インフォメーション
~「在籍管理が適正に行われない大学等に対する指導指針」を月内決定へ~
文部科学省はこのほど全国の国公私立大学長と高等専門学校長向けに、「外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底等について」の通知を発出した。今月中にも在籍管理が適正に行われない大学等に対する指導体制が強化されるのを前に、改めて基本方針の周知を行った形だ。
今回の通知では、昨年決定した令和6年度大学入学者選抜実施要項で留学生の入学者選抜に際し「真に修学を目的とし、その目的を達成するための十分な能力・意欲・適性等を有しているかを適切に判定する」よう求めていたことに言及した上で、①日本語等の必要な能力基準の明確化、②日本留学試験の積極活用と渡日前入学許可の実施、③受入れた留学生に対する適切な在籍管理の徹底、等を改めて要請している。
この内①については、日本語で授業を行う場合の目安として「日本語能力試験N2レベル相当以上」を明記。③では学業成績と資格外活動(アルバイト)の状況を的確に把握するとともに、退学者の処分に際しては大学等が責任をもって帰国や進学・就職の指導を行うことを求めている。また学生数の確保という観点からの安易な留学生受入れは厳に慎み、受入れ数が教育体制の現状に見合わない過大な数とならないよう改めて注意を喚起した。
一方、大学等が運営する留学生別科が、日本語能力N2レベル相当以上に達していない留学生向けに専ら日本語教育を行う場合、今年度以降は日本語教育機関認定法に基づく「留学」課程の認定を文科省から得ることが原則として求められるが(注:当面は移行期間あり)、交換留学生や国費留学生のみを対象とする場合のように同認定を要さないケースでも、「日本語教育機関認定基準等を参考にし、適切な教育環境を確保すること」が望ましいとした。
また同様に、日本語能力N2レベル相当以上に達していない研究生や聴講生、科目等履修生等のいわゆる非正規生を対象に、専ら日本語教育を行おうとする場合には、日本語教育機関認定法に基づく認定を受けた教育機関以外、原則として入学のための在留資格を付与しない方向で、近く出入国在留管理庁が制度改正を予定しているが、文科省通知ではこれにも触れている。
上記のほか通知では、▶留学生の卒業後等における在留資格手続きや所在不明者の届け出、▶退学者・除籍者・所在不明者に関する翌月10日までの定期報告、についても引き続き各大学等の対応を求めた。
文科省では月内にも「外国人留学生の在籍管理が適正に行われない大学等に対する指導指針」を決定する予定で、各大学等の毎年度における留学生の退学・除籍・所在不明者の割合をもとに、対象大学に対して指導を行う方針だ。同省が先月まとめた指導指針案によれば、在籍留学生の内、同割合が5%を超える大学等に改善指導を行い、非適正な状態が3年連続した場合には「在籍管理非適正校」として指定・公表するとともに、出入国在留管理庁に報告するとしている。
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~2023年末現在の「在留外国人数」統計から読み解く~
出入国在留管理庁が先に公表した在留外国人統計によれば、2023年末時点で「留学」の在留資格を得て日本に在留する外国人は34万883人で、この内ほぼ4割(13万4651人)を中国出身者が占めた。他の在留資格所持者を含めた在日外国人全体においても、中国出身者の数は82万1838人と、これに次ぐベトナム(56万5026人)や韓国(41万156人)の出身者を大きく引き離し、出身国・地域別で最多となっている。来日外国人の日本における在留目的が多様化する中、「留学」以外の在留資格をもつ中国出身者の状況はどのように推移しているのか。過去の状況を含め、最新の概況を整理する。
(1)在留者の4割占める「永住者」が33万人
日本に在留する中国出身者の内、在留資格別比率が4割と最も高いのは「永住者」であり、その数は33万810人に上る。全ての国・地域を含めた「永住者」全体(89万1569人)の内訳をみても、中国出身者の割合は37%と群を抜く。「永住者」はもともと「留学」や「家族滞在」等、他の在留資格で来日後、就労等を目的とする在留資格に変更するなどして長期間にわたり日本に在留し、日本国内に生活の拠点を持つ人が大多数に上る。中国出身「永住者」はすでに10年前(2013年末)の時点で20万人に達しており、新型コロナが拡大する直前の2019年末には27万人、さらに22年末には30万人を突破。昨年末時点の数は、前年(2022年末)よりもさらに約2万6千人増えている。
一方で、日本政府は最近、「永住者」の内、納税や社会保険料納付等の義務を果たしていない在留者について、永住許可の取り消しを含めた措置を検討する方針を示した。中国出身者に限らず、今後はこうした該当者への対応強化が見込まれる。同措置と並行して、新たな永住許可申請に対する入管庁の審査がどのように変化するかも、当面の焦点となる。
(2)「技・人・国」では4分の1占めるもベトナムが先行
中国出身の在留資格所持者の内、「永住者」と「留学」に次いで実数が多いのが、「技術・人文知識・国際業務」だ。簡略化して「技・人・国」とも呼ばれる同資格は、主に日本での就労を目的とするものであり、留学生が日本の大学や専門学校を卒業後に日本企業等で就職する際の主要な在留資格となっている。近年、日本企業のグローバル採用拡大などを受け、「留学」から就労目的の在留資格へと変更する中国出身者は単年度で1万人を超えていて、「技・人・国」の在留資格を持つ外国人の数も、コロナ禍の一時期を除けば、順調に増え続けている。その主要な担い手となっているのが「留学」からの移行組であり、昨年末時点で在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもつ中国出身者の数は9万2141人に上った。この数は同資格所持者全体の4分の1に相当する規模だが、出身国別内訳では今回初めて、ベトナム(9万3391人)が中国をわずかに上回っている。
背景には、世界的な経済構造の再編に伴い日本企業の主要な展開地域が東南アジア等へとシフトしていることや、一人っ子世代が占める中国出身者のキャリアプランの変化、さらには為替の急激な円安傾向もあるとみられる。なお、昨年末時点の内訳は現時点で不明だが、日本での企業経営等を目的とする在留資格「経営・管理(全国籍者で3万7510人)」も、中国出身者が多数に上る見通しだ。
(3)「技能実習」と「特定技能」では薄い存在感
さらに前出の就労目的をより広い範囲で見た場合、「技能実習」と「特定技能」も同じカテゴリーに含まれ得る。中国出身者でみると「技能実習」は2万8860人、「特定技能(1号・2号)」は1万3468人が、それぞれ在留資格を持ち日本に在留している。ただ規模でみると「技能実習」は10年前(約10万7千人)の4分の1程度の水準で、全体(約40万4千人)に占める中国出身者の比率は7%となっていて、出身国別最多であるベトナム(約20万3千人)の1割強にすぎない。また「特定技能」においても最多のベトナム(約11万人)との対比では圧倒的に少なく、出身国別ではインドネシアやフィリピンを下回る4番目となっている。日本政府は現行の技能実習制度を廃止し、人材確保を主眼とする「育成就労制度」を創設することを先に決定したが、経済構造が大きく変化する中、中国に関しては新制度においてどの程度の来日希望者が見込めるのか、先行きは不透明だ。
⑷「家族滞在」「日本人の配偶者」とも出身国別で最多
一方で、中国出身の在留者の数が相当数に上っているのが、親族に関わる在留資格である「家族滞在」と「日本人の配偶者等」だ。まず「家族滞在」は出身国別で2位のベトナム(5万2523人)や3位のネパール(5万382人)を上回り、中国が7万6131人で最も多い。元来、3か国とも「留学」や「技・人・国」による在留者が多い国でもあり、現に「家族滞在」自体、留学生の本国における配偶者と子女が来日するための在留資格だ。また「日本人の配偶者等」は中国(2万6426人)とフィリピン(2万6201人)が双璧で、両国は日本人の国際結婚における相手方の主要な出身国となっている。中国出身者では、このほかに在留資格「定住者」が2万9615人いる。
(5)「特定活動」滞在者も一定規模に
なお全体の中ではごく少数だが、「特定活動」の在留資格を得て日本に在留している中国出身者も9942人に上っている。一口に「特定活動」といっても、入管庁がその範疇に含めている在留目的は非常に広い。例えば留学生が卒業後も引き続き就職活動を行う「継続就職活動」や、在学中及び卒業後から採用までの滞在期間に在留するための「内定待機者」向け、さらには高度な日本語力を運用する業務に従事するための通称「特定活動46号」まで、多種多様だ。今後、来日者の多国籍化と在留目的のさらなる多様化が進めば、既存の在留資格区分では収まらないこうした在留スキームによる在留者が、より増えることも想定される。
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2023年12月に国内外で行われた日本語能力試験(JLPT)について、実施元の日本国際教育支援協会と国際交流基金は、このほど全体的な実施結果をまとめ公表した。受験者数は日本国内が23万6547人、海外が42万6748人の計66万3295人で、前年同時期(22年12月)試験との比較で5割強増えている。最終的な認定者数は23万5754人だった。
受験レベル別では最も難易度が高いN1の受験者が12万1554人で、認定者は3万7553人、認定率30.9%となっている。N2は受験者数16万4670人に対し、認定者数6万3807人で認定率38.7%。どちらも認定率では海外受験者が国内受験者を上回る状況に従前と変化はないが、今試験では国内外のギャップが縮小し、特にN2では国内受験者の認定率が前年同時期を7ポイント上回った。
総合得点の平均点はN1が90.1点、N2は88.1点で、いずれも最高点は満点(180点)だった。認定者数をみると、前年同時期試験との単純比較でN1は約1万2千人、N2は約3万1千人増えており、とりわけN2の認定者はほぼ倍増しているのが特筆される。
※中国内の受験者12万9千人、8割がN2以上を受験
全受験者数の6割強を占める海外の実施国・地域別状況を見ると、受験者数が群を抜いて多かったのは中国で、香港・マカオを含めた累計で12万9103人に上った。実施都市別では南部の広東省広州(1万3952人)が引き続き最多で、上海(1万2322人)も1万人を超える。さらに遼寧省大連(8434人)、香港(6690人)、北京(6312人)、陝西省西安(5728人)、浙江省杭州(5166人)の5都市を含めた計7都市が、受験者数5千人超となっている。受験レベルでは中国内受験者の内37%がN1(4万7751人)を受験しており、N2受験者(5万5148人)も含めると10万人を超える状況で、中国内受験者のほぼ8割に及ぶ。
海外の実施国・地域別で、受験者数が中国に次いで多いのはミャンマー(8万6406人)だが、N4受験者が過半数(4万6599人)で、N1とN2を合わせた受験者数は6%程度(5491人)にとどまっている。なお最大都市ヤンゴンは、世界のJLPT実施都市の中で今回受験者数が最も多かった(6万8586人)。
また日本への留学希望者が比較的多い韓国(3万8359人)、台湾(3万4376人)、ベトナム(2万8562人)なども受験者数が一定規模に上っている。特に韓国のソウル(1万8874人)や台湾の台北(1万6188人)は、都市別受験者数では中国の広州、上海を上回る。ベトナムは二大都市のホーチミン(1万2982人)とハノイ(1万2220人)の受験者数が、ほぼ同水準だった。
これらのほかに国・地域ベースで受験者数が1万人を超えていたのは、インドネシア(1万6468人)、タイ(1万5683人)、インド(1万4464人)の3か国。
なおアジア地域以外でJLPT受験者数が比較的多かったのは米国(5533人)で、欧州地域ではフランス、イタリア、ロシアが各1千人超となっている。
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~文科省「令和5年度外国人留学生キャリア形成促進プログラム」の適用対象~
3月29日に最初の認定校が決まった文部科学省の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」について、いわゆる「継続就職活動」者も対象となることが確認された。同プログラムは、留学生に対し質の高い教育を行っているとして文部科学大臣が認定した専門学校の卒業留学生について、就労目的の在留資格申請に際し従来求められてきた学校での専攻内容と就職先での業務内容との関連性が、大卒者同様、柔軟に判断されるようになる。
プログラムの初年度となる令和5年度(2023年度)は、申請があった全国の専門学校から186校474学科が正式に認定された。ただ認定校の発表が年度末となったため、同年度の就職活動はすでに終了しており、新卒留学生に関しては、在籍学校が認定校となった場合に就活上の恩恵にあずかれるのは同6年度以降となる。
ただ令和5年度卒の留学生で、在学中に就職先が決まらず、学校の推薦状により出入国在留管理庁から継続就職活動を目的とする「特定活動」への在留資格変更を認められ、就活を継続している元留学生も一定数に上るとみられる。文部科学省専修学校教育振興室の関係者は『留学生新聞』の取材に対し、継続就活中の元留学生が令和5年度に卒業した専門学校が、同年度の「外国人留学生キャリア形成促進プログラム」認定校である場合には、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の申請時に在留資格要件が同様に緩和される対象になると述べた。
なお認定校・学科に対しては3年に1度、基準の充足状況を確認するためのフォローアップが行われる予定だが、この間に認定校を卒業した留学生には同様の扱いが適用される。
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~政府が分野別の受入れ見込み数を運用方針に盛り込む~
政府は先週「外国人の受入れと共生に関する関係閣僚会議」を開き、「特定技能1号」の対象分野として新たに自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加し、現行12分野と合わせ計16の特定産業分野とすることを閣議決定した。既存の技術系分野である「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は名称を「工業製品製造業分野」に変更し、同分野を含む計3分野において新たな対象業務が追加されている。同時に政府は、今年4月以降の向こう5年間で、「特定技能1号」外国人の受入れ見込み総数(上限数)を82万人とする方針を決定し、各分野別の受入れ見込み数を「分野別運用方針」に盛り込んだ。
出入国在留管理庁のまとめによれば、昨年末時点で在留資格「特定技能1号」を有し国内に在留する外国人は20万8462人にとどまっていて、今回政府が決めた見込み数はその4倍の規模に相当する。今後新たに創設される「育成就労制度」が、「特定技能1号」への育成期間(3年間)と位置付けられており、向こう5年間の後半には育成就労からの移行も想定しているとみられるが、現状からみて目標数値のハードルは相当高く設定された印象だ。
小泉龍司法務大臣は閣議決定後の会見で、この見込み数が「大きい数字」であるとの受け止めを示した上で、制度が導入された5年前と比べ、人手不足への対応から外国人の受入れニーズが高まっている点を理由に挙げた。閣議決定に先立つ与党内の議論では、労働条件の向上など国内の人材確保に向けた努力を先行させるべきとの声もあったが、小泉大臣は「生産性の向上、或いは国内における雇用の拡大がまずあって、その次の手段として外国人労働者の受入れということはしっかりと枠組みとして設定されている」と述べた。
政府がこのほど策定した特定技能の在留資格に関する「分野別運用方針」によると、令和10年度末まで5年間の全16分野における受入れ見込み数(上限数)は、「工業製品製造業」が17万3300人で最も多く、「飲食料品製造業」(13万9千人)と「介護」(13万5千人)を合わせた3分野が10万人以上。さらに「建設」8万人、「農業」7万8千人、「外食業」5万3千人、「ビルクリーニング」3万7千人、「造船・舶用工業」3万6千人、「宿泊」2万3千人、「漁業」1万7千人、「自動車整備」1万人、「航空」4400人となっている。
また、今回追加された新分野の中では「自動車運送業」(2万4500人)の数が突出していて、「木材産業」は5千人、「鉄道は」3800人、「林業」は1千人にそれぞれ設定された。
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