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~文化審議会・日本語教育小委員会がワーキンググループを設置~
日本語教育に関する新たな法律の成立を受けて、日本語教育機関の新たな制度運用に向けた検討が本格的に始まった。文化審議会は先週の会議で、日本語教育小委員会の下に、ワーキンググループを設置した。日本語教育小委員会は外国人向けの日本語教育全般を司るが、この内、新法に盛り込まれた「認定日本語教育機関」の設置基準と、運用上必要な規定づくりが、ワーキンググループの主要議題となる。日本語教育機関の多様性に配慮しつつ、機関認定に際し求める基準をどのように具体化し、円滑な運営に向けた体制を構築するかが問われる。
またワーキンググループでは、「留学」、「就労」、「生活」など異なる日本語教育のカテゴリーごとに、「コアカリキュラム(仮称)」の設置も検討する。文化審議会では一昨年、日本語教育の内容やレベル・評価の共通指標となる「日本語教育の参照枠」を設けており、これを踏まえた分野別のカリキュラムづくりが始動する形だ。同グループは今月以降、11月までに4回程度の会合を予定している。
一方、委員会ではこれとは別のワーキンググループで、「登録日本語教員」の実践研修と養成を行う機関の登録手続きや、新たな国家試験の試行試験実施に向けた検討も行う。今後の開催スケジュールによると、試行試験については9月19日の会議で実施方針が、来年1月予定の会議ではその結果が、それぞれ議題となっていることから、この間に行われる公算が高そうだ。
★外国人が入国時に提出のEDカード 記載事項を9か国語で公開
外国人が日本への入国にあたって提出を求められる「外国人入国記録(EDカード)」に関し、出入国在留管理庁はより多くの外国人が判読できるよう、多言語翻訳を併記したバージョンを公開した。EDカードには日本語のほかに、英語や中国語(簡体字版・繁体字版)、韓国語が組み合わせて掲載された計3種類があるが、他の言語は入っていない。
今回公開されたのは上記の他に、ネパール語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、ロシア語を含む計9バージョン。EDカード上の質問事項の内容が各言語で翻訳されていて、入国予定者はあらかじめ翻訳版を参照しながら、必要事項を記載できる。なお、これらはあくまでも見本なので、実際の入国審査で提出する際には使用できず、英語か日本語での記載が必要となる。
EDカードはすでに電子化されており、「Visit Japan Web」上にある「外国人入国記録」の欄にあらかじめ入力しておけば、QRコードが表示され、入国時、入国審査官に提示することでスムーズな手続きが可能となっている。
※「外国人入国記録(EDカード)」翻訳併記版
https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/translation.html
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東京都が昨年10月に国家戦略特区の枠組みを活用し全国に先駆けスタートした「外国人美容師育成事業」で、適用第一号として、中国人2名、韓国人1名の計3名が都内の美容サロンに採用され、4月から就労を開始している。
この事業は、日本国内の美容師養成施設で学び、美容師免許を取得した外国人留学生らが、美容師として最大5年間就労し、実践的な技術や接客スキルなどを身に付けることを一定の要件下で認めるもの。これまでは養成施設で学んだ外国人留学生が美容師免許を取得しても、在留資格上、日本で美容師として働くことは許可されていなかった。
このほど3名を採用したのは全国に展開している美容室「ヘアサロンTAYA」で、育成機関の要件を満たした外国人美容師就労の一号店となった。同美容室によれば、対象の3名は国内の美容学校を卒業後、美容師免許を取得し、4月から池袋、吉祥寺、銀座の各サロンに配属されているという。「ヘアサロンTAYA」では、日本の美容促進、インバウンド需要に対応するため3名を5年間、美容師として就労させ育成するとしており、今後、日本が誇る美容技術を世界に向けて発信し、海外との橋渡し役を担うことが期待されている。
※日本の高度な美容技術とおもてなしを世界に発信
東京都は「外国人美容師育成事業」の利用者に、日本で学んだ知識や経験をそれぞれの出身国で生かしてもらうことを期待しており、昨年の事業開始時に小池百合子東京都知事は「日本の高度な美容技術や、おもてなしの心が世界へと発信される。これはすなわち東京のブランド価値につながるものだ」と意義を強調していた。
就労までの流れは、まず美容師の育成機関が要件を満たす留学生を採用した上で、都に対し育成計画の申請を行い、認定を受ける。対象者は、美容師養成施設で学び美容師免許を取得していて(育成計画申請時点では免許取得見込み者も含む)、日本語レベルが日本語能力試験N2相当であることが必要。加えて事業終了後には母国へ帰国し、日本式美容に関する技術・文化を海外へ発信する意思があることも求められる。
留学生は美容師国家試験に合格し美容師免許を取得後に、最寄りの地方出入国在留管理官署で「特定活動」への在留資格変更許可を申請する。
制度の実施にあたり都は、外国人美容師の受入れ機関(育成機関)を監理し美容師に寄り添ったサポートも担う「監理実施機関」の公募を実施済みで、昨夏に最初の対象機関を決定していた。
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「日本語教育機関の認定等に関する法律案」が通常国会で成立したことを受けて、文部科学大臣の認定・登録を受けた「認定日本語教育機関」と「登録日本語教員」による新たな日本語教育の枠組みが、来年4月から始動する。今後の焦点は、現職日本語教員や既存の日本語教育機関に対する経過措置の具体的な中身へと移る。
今回の法律案には計6か条の附則が定められており、施行時期は来年4月1日だが、経過措置が必要となるものについては「公布の日から施行」するとされた。この中では「認定日本語教育機関」において日本語教育を担当する教員について、「日本語教員試験に合格し、かつ実践研修を修了した者」のほかに、当面は「これに準ずる者として文部科学省令で定める資格若しくは実務経験を有する者」も含むとしている。
また附則では同法の施行後、5年を目途として、施行状況に検討を加え必要な措置を講じると明記していて、現職教員に対する経過措置も「5年」が一つの目安となる見込みだ。法案審議の過程で永岡桂子文部科学大臣もこの期間に言及した上で、「現職の日本語教員で一定の要件を満たす者が登録日本語教員へと円滑に移行できるようにする」と説明している。
一方、日本語教育機関についても、「認定日本語教育機関」であることが、事実上、留学生に対する在留資格付与の要件となる方向で、これを定める法務省令と経過措置のあり方も焦点となる。
★「特定技能2号」拡大を自民党委員会が了承
熟練した技能をもつ業務に従事する外国人向けに付与される「特定技能2号」の在留資格に関し、政府はこれまで2分野に限定してきた対象分野を11分野へと拡大する方針で、自民党の外国人労働者等特別委員会は先週の会合で、こうした方向性を了承した。会合では対象分野のさらなる追加を求める意見が出た一方で、日本人の雇用を守る観点から拡大に懸念の声もあったという。
これに関して齋藤健法務大臣は会見で、「特定技能2号」は一定の専門性に加え熟練した技能を求められるという意味合いで「二重のハードル」があり、対象分野も限定されてきたために、「現場からの(分野拡大に関する)要望がある」としながらも、自民党内には指摘されたような懸念もあると語った。今後の見通しについては「与党の中で了承されて、これからまた必要なプロセスを経ていく」として、具体的な言及を避けた。
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日本語教育機関と日本語教員に関する新たな認定・登録の枠組みを定めた「日本語教育機関認定法」が、5月26日の参議院本会議で与野党の賛成多数により可決され成立した。来年4月1日より施行される。令和元年に成立の「日本語教育推進法」で掲げられた「日本語教育の水準の維持向上」を具体化する立法措置であり、日本政府が目指す多文化共生社会の実現へ向けた節目とも位置づけられる。
同法の正式名称は「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案」。内容としては、①日本語教育機関の内、一定の要件を満たすものを、文部科学大臣が「認定日本語教育機関」として認定する制度を創設、②同機関で日本語教育課程を担当する教員は文科大臣の登録を受けた「登録日本語教員」でなければならない、③同教員として登録を受けるには日本語教員試験に合格し、かつ実践研修を修了する必要がある、④文科大臣は認定機関に対し日本語教育の実施状況の報告を求め、勧告や是正命令を行うことができる、⑤文科大臣は設置基準について法務大臣と協議する、などが柱だ。この内、③に関しては、指定の養成課程を修了した者は教員試験の一部を免除するとしているほか、「認定日本語教育機関」の教員資格については、法律の施行時期とは別に経過措置を設けることも謳った。同時に、日本語教育の所管は、従来の文化庁から文科省(本省)へと移管される。
法案は内閣提出法案として通常国会に提出後、5月12日の衆議院本会議で可決され、その後、同25日まで参議院の文教科学委員会で審査が行われていた。同委員会の高橋克法委員長は26日の採決に際して委員会審査の経過を報告し、▶現行の法務省告示校制度の課題、▶日本語教員の処遇改善の必要性、▶外国にルーツを持つ子供に対する日本語教育の充実策、等をめぐり質疑が行われたと述べた。今後は、現職日本語教員に対する経過措置の詳細などを定める審議会の動向も、大きな焦点となる。法案には8項目の附帯決議が付いた。
最終的な参院本会議の採決においては、与党の自民・公明両党、立憲民主党、日本維新の会などが法案に賛成し、日本共産党とれいわ新選組が反対した。
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