インフォメーション
6月16日に実施される2024年度第1回「日本留学試験(EJU)」で、全体的な応募状況が明らかになった。日本学生支援機構(JASSO)のまとめによれば、応募者数は日本国内が1万9849人、国外が6239人の総計2万6088人となっている。前年度(2023年度)6月試験の当初応募者数(日本国内2万0612人、国外5076人、計2万5688人)との単純比較でみると、国外は23%増えたが、日本国内は3%減少している。実数では国内外合計で400人上積みした形だ。
新型コロナウイルス感染症が沈静化した昨年度、EJUの受験者数はV字型回復を遂げており、入国留学生の数も順調に増え続ける中、今年度も国内外の受験者数は安定的に推移する見通しだ。
日本国内のEJU6月試験応募者を試験の実施地別にみると、設置会場数が最も多い東京都が1万3413人で全国の67%を占めたほか、大阪府(1973人)、京都府(793人)、福岡県(743人)、埼玉県(475人)、千葉県(475人)、愛知県(386人)、神奈川県(332人)等となっている。
また国外会場では例年同様、韓国・ソウルの応募者数が2701人と最多で、香港(1398人)、韓国・プサン(607人)、台湾・台北(430人)、モンゴル・ウランバートル(356人)を含む計5都市が、応募者数300人以上だ。香港は前年6月試験より、5割近く(442人)増えている。現在EJUが実施されていない中国本土から、香港へ受験に赴いている層も一定数に上るとみられる。ベトナムは、ハノイ(104人)とホーチミン(41人)の2都市を合わせ145人だった。
目下、EJUは高等教育機関に進学予定の外国人留学生の大多数が受験しており、応募者数の帰趨は、各大学や専門学校等における2025年留学生入試の受験者動向を読み解く上で重要な指標となる。
難民条約上の難民には該当しないものの、人種や国籍等を理由に迫害を受ける恐れのある「補完的保護対象者」に対し、日本語教育や生活に関するガイダンスを行う「定住支援プログラム」が今週から始まった。法務省によれば第1回目の受講予定者は107名で、昼間の対面コースが24名、オンライン受講コースが22名、夜間のオンライン受講コースが61名という内訳になっている。実施期間は昼間コースが6か月間、夜間コースが1年間となる見通しだ。
同プログラムでは、対象者向けに572時限の日本語教育や、120時限に及ぶ生活ガイダンスを提供することにより、日本で生活するために必要な知識や日本語能力を身につけてもらうことを主眼とする。またハローワークによる就労支援等も行い、日本で就労しながら自立した生活を送っていけるよう、プログラム終了後も継続的なサポートを行っていく計画だ。
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出入国在留管理庁によると、今年3月の1か月間に日本へ新たに入国した外国人の総数は283万人(概数、以下同じ)で、2月(259万1千円)や1月(245万2千人)を上回った。この数は、昨年1年間で最も月間ベースの新規入国者数が多かった12月(263万9千人)よりさらに20万人多く、新型コロナ向けの水際対策が終了して以降、最多の数となる。
出入国をめぐる状況がほぼコロナ禍前に戻ったことに加え、昨今の急激な円高ドル安傾向が、観光客などインバウンドの本格回復を後押ししているとみられる。
3月の新規来日者を出身国・地域別にみると、韓国が64万7千人で引き続き最も多く、台湾(46万2千人)、中国(大陸、31万9千人)、米国(28万3千人)、香港(英香港含め22万7千人)等が多い。ベトナムは3万5千人だった。
~認定に際しての確認事項で「相当程度高額でない」の中身が焦点に~
日本語教育機関認定法の施行により日本語教育機関の新制度が本格的なスタートを切る中、制度全般に関する具体的なルールや審査方針は、今後、認定日本語教育機関の申請を予定している各機関にとって対応を要する課題となる。
各機関が生徒募集や入学手続きのサポート等を行う第三者に対して支払う、いわゆる仲介手数料のあり方も焦点の一つだ。認定日本語教育機関の施行規則では、財務に関する評価項目の中に仲介手数料の適正性も含まれており、もし仲介業者等を活用しているにも関わらず、後日各機関が行う点検・評価項目に含めていない場合には、国による指導等の対象になる恐れがあるという。
一方で4月1日に日本語教育部会が正式決定した「認定日本語教育機関の認定等にあたり確認すべき事項」では、「安定かつ継続して質の高い日本語教育課程を実施する観点から、生徒一人当たりについて支払う仲介手数料の額が、「日本語教育機関が生徒から徴収する授業料等の額と比較して、相当程度高額でないこと」を求めているが、その基準は曖昧なままとなっている。同案をまとめた文化庁は昨年度末の時点で「高額」に関する明確な基準はないとした上で、「(各機関からの)個別の申請内容により、設定された授業料等の納入金の額や、教育活動に要する費用等を総合的に勘案して(適正性を)判断することになる」との見解を示している。
★日米が日本語・日本文化専門家を増やす枠組みで合意
日米両国は、米国における日本語や日本文化の専門家を増加させるための新たな枠組みで合意した。4月11日、相航一・在米日本大使館特命全権大使とリー・A・サターフィールド米国務次官補が、教育・文化交流機会創出のための協力覚書に署名を行った。
外務省によれば双方は今後、現行の交流訪問者ビザプログラムのスキームにより、米国の教育現場で日本語指導助手として活躍する若者への支援を強化する。日本語授業において日本語教師を補佐する日本語指導助手に対し研修機会を提供する団体を拡大するほか、事業参加者の滞在期間を最長36か月間まで延長(当初は1年ビザ、最大24か月延長)すること等が柱となる。
協力覚書によれば、米側の主体となる国務省が、交流プログラムに申請可能とした対象には、日本の政府機関から事前に資金援助を受ける候補者等のほか、「登録日本語教員」も含まれるとしている。
日米双方は昨年10月に行われた政策対話において、米国における日本語教育の振興の重要性を確認するとともに、将来的な日本語教師の増加を目指すことで合意していた。
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~「在籍管理が適正に行われない大学等に対する指導指針」を月内決定へ~
文部科学省はこのほど全国の国公私立大学長と高等専門学校長向けに、「外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底等について」の通知を発出した。今月中にも在籍管理が適正に行われない大学等に対する指導体制が強化されるのを前に、改めて基本方針の周知を行った形だ。
今回の通知では、昨年決定した令和6年度大学入学者選抜実施要項で留学生の入学者選抜に際し「真に修学を目的とし、その目的を達成するための十分な能力・意欲・適性等を有しているかを適切に判定する」よう求めていたことに言及した上で、①日本語等の必要な能力基準の明確化、②日本留学試験の積極活用と渡日前入学許可の実施、③受入れた留学生に対する適切な在籍管理の徹底、等を改めて要請している。
この内①については、日本語で授業を行う場合の目安として「日本語能力試験N2レベル相当以上」を明記。③では学業成績と資格外活動(アルバイト)の状況を的確に把握するとともに、退学者の処分に際しては大学等が責任をもって帰国や進学・就職の指導を行うことを求めている。また学生数の確保という観点からの安易な留学生受入れは厳に慎み、受入れ数が教育体制の現状に見合わない過大な数とならないよう改めて注意を喚起した。
一方、大学等が運営する留学生別科が、日本語能力N2レベル相当以上に達していない留学生向けに専ら日本語教育を行う場合、今年度以降は日本語教育機関認定法に基づく「留学」課程の認定を文科省から得ることが原則として求められるが(注:当面は移行期間あり)、交換留学生や国費留学生のみを対象とする場合のように同認定を要さないケースでも、「日本語教育機関認定基準等を参考にし、適切な教育環境を確保すること」が望ましいとした。
また同様に、日本語能力N2レベル相当以上に達していない研究生や聴講生、科目等履修生等のいわゆる非正規生を対象に、専ら日本語教育を行おうとする場合には、日本語教育機関認定法に基づく認定を受けた教育機関以外、原則として入学のための在留資格を付与しない方向で、近く出入国在留管理庁が制度改正を予定しているが、文科省通知ではこれにも触れている。
上記のほか通知では、▶留学生の卒業後等における在留資格手続きや所在不明者の届け出、▶退学者・除籍者・所在不明者に関する翌月10日までの定期報告、についても引き続き各大学等の対応を求めた。
文科省では月内にも「外国人留学生の在籍管理が適正に行われない大学等に対する指導指針」を決定する予定で、各大学等の毎年度における留学生の退学・除籍・所在不明者の割合をもとに、対象大学に対して指導を行う方針だ。同省が先月まとめた指導指針案によれば、在籍留学生の内、同割合が5%を超える大学等に改善指導を行い、非適正な状態が3年連続した場合には「在籍管理非適正校」として指定・公表するとともに、出入国在留管理庁に報告するとしている。
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~2023年末現在の「在留外国人数」統計から読み解く~
出入国在留管理庁が先に公表した在留外国人統計によれば、2023年末時点で「留学」の在留資格を得て日本に在留する外国人は34万883人で、この内ほぼ4割(13万4651人)を中国出身者が占めた。他の在留資格所持者を含めた在日外国人全体においても、中国出身者の数は82万1838人と、これに次ぐベトナム(56万5026人)や韓国(41万156人)の出身者を大きく引き離し、出身国・地域別で最多となっている。来日外国人の日本における在留目的が多様化する中、「留学」以外の在留資格をもつ中国出身者の状況はどのように推移しているのか。過去の状況を含め、最新の概況を整理する。
(1)在留者の4割占める「永住者」が33万人
日本に在留する中国出身者の内、在留資格別比率が4割と最も高いのは「永住者」であり、その数は33万810人に上る。全ての国・地域を含めた「永住者」全体(89万1569人)の内訳をみても、中国出身者の割合は37%と群を抜く。「永住者」はもともと「留学」や「家族滞在」等、他の在留資格で来日後、就労等を目的とする在留資格に変更するなどして長期間にわたり日本に在留し、日本国内に生活の拠点を持つ人が大多数に上る。中国出身「永住者」はすでに10年前(2013年末)の時点で20万人に達しており、新型コロナが拡大する直前の2019年末には27万人、さらに22年末には30万人を突破。昨年末時点の数は、前年(2022年末)よりもさらに約2万6千人増えている。
一方で、日本政府は最近、「永住者」の内、納税や社会保険料納付等の義務を果たしていない在留者について、永住許可の取り消しを含めた措置を検討する方針を示した。中国出身者に限らず、今後はこうした該当者への対応強化が見込まれる。同措置と並行して、新たな永住許可申請に対する入管庁の審査がどのように変化するかも、当面の焦点となる。
(2)「技・人・国」では4分の1占めるもベトナムが先行
中国出身の在留資格所持者の内、「永住者」と「留学」に次いで実数が多いのが、「技術・人文知識・国際業務」だ。簡略化して「技・人・国」とも呼ばれる同資格は、主に日本での就労を目的とするものであり、留学生が日本の大学や専門学校を卒業後に日本企業等で就職する際の主要な在留資格となっている。近年、日本企業のグローバル採用拡大などを受け、「留学」から就労目的の在留資格へと変更する中国出身者は単年度で1万人を超えていて、「技・人・国」の在留資格を持つ外国人の数も、コロナ禍の一時期を除けば、順調に増え続けている。その主要な担い手となっているのが「留学」からの移行組であり、昨年末時点で在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもつ中国出身者の数は9万2141人に上った。この数は同資格所持者全体の4分の1に相当する規模だが、出身国別内訳では今回初めて、ベトナム(9万3391人)が中国をわずかに上回っている。
背景には、世界的な経済構造の再編に伴い日本企業の主要な展開地域が東南アジア等へとシフトしていることや、一人っ子世代が占める中国出身者のキャリアプランの変化、さらには為替の急激な円安傾向もあるとみられる。なお、昨年末時点の内訳は現時点で不明だが、日本での企業経営等を目的とする在留資格「経営・管理(全国籍者で3万7510人)」も、中国出身者が多数に上る見通しだ。
(3)「技能実習」と「特定技能」では薄い存在感
さらに前出の就労目的をより広い範囲で見た場合、「技能実習」と「特定技能」も同じカテゴリーに含まれ得る。中国出身者でみると「技能実習」は2万8860人、「特定技能(1号・2号)」は1万3468人が、それぞれ在留資格を持ち日本に在留している。ただ規模でみると「技能実習」は10年前(約10万7千人)の4分の1程度の水準で、全体(約40万4千人)に占める中国出身者の比率は7%となっていて、出身国別最多であるベトナム(約20万3千人)の1割強にすぎない。また「特定技能」においても最多のベトナム(約11万人)との対比では圧倒的に少なく、出身国別ではインドネシアやフィリピンを下回る4番目となっている。日本政府は現行の技能実習制度を廃止し、人材確保を主眼とする「育成就労制度」を創設することを先に決定したが、経済構造が大きく変化する中、中国に関しては新制度においてどの程度の来日希望者が見込めるのか、先行きは不透明だ。
⑷「家族滞在」「日本人の配偶者」とも出身国別で最多
一方で、中国出身の在留者の数が相当数に上っているのが、親族に関わる在留資格である「家族滞在」と「日本人の配偶者等」だ。まず「家族滞在」は出身国別で2位のベトナム(5万2523人)や3位のネパール(5万382人)を上回り、中国が7万6131人で最も多い。元来、3か国とも「留学」や「技・人・国」による在留者が多い国でもあり、現に「家族滞在」自体、留学生の本国における配偶者と子女が来日するための在留資格だ。また「日本人の配偶者等」は中国(2万6426人)とフィリピン(2万6201人)が双璧で、両国は日本人の国際結婚における相手方の主要な出身国となっている。中国出身者では、このほかに在留資格「定住者」が2万9615人いる。
(5)「特定活動」滞在者も一定規模に
なお全体の中ではごく少数だが、「特定活動」の在留資格を得て日本に在留している中国出身者も9942人に上っている。一口に「特定活動」といっても、入管庁がその範疇に含めている在留目的は非常に広い。例えば留学生が卒業後も引き続き就職活動を行う「継続就職活動」や、在学中及び卒業後から採用までの滞在期間に在留するための「内定待機者」向け、さらには高度な日本語力を運用する業務に従事するための通称「特定活動46号」まで、多種多様だ。今後、来日者の多国籍化と在留目的のさらなる多様化が進めば、既存の在留資格区分では収まらないこうした在留スキームによる在留者が、より増えることも想定される。
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