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2日の衆院予算委員会で、国民民主党の古川元久国対委員長は政府の水際対策を取り上げ、昨年来入国予定の外国人留学生が入国できない状況が続いており、海外の多くの国の受入れ例に倣って入国を認め、日本で学べる環境をつくることが必要ではないか、と岸田文雄首相に問い質した。
これに対し岸田首相は、「外国人留学生が諸外国との友好関係を構築する、わが国の教育研究力の向上を図る等において重要であり、外国人留学生の新規入国については人道上、国益上の観点から個別の事情を慎重に勘案し、必要な防疫措置を講じた上で入国を認めてきた」と政府対応を説明しながらも、「状況が刻々と変化している。国内外の感染状況の差、あるいはオミクロン株の特性をしっかりと踏まえた上で、必要かつ適切な対応を絶えず考えていかなければならないと思う」と述べた。直近の方針については「当面2月末までということで今の体制の骨格は維持しているが、状況をしっかりと把握しながら適切な対応をたえず考えていきたい」と繰り返した。
首相の答弁を受けて古川国対委員長は「日本のことを将来考えても、日本で学びたいという留学生を受入れるということはやはり国益に叶うことだと思う。そういう方々が早く日本に来て学べる環境を、4月からまた新学期も始まるわけなので、間に合うような形で対応していただきたい」と重ねて要望した。
岸田首相は昨年11月末に「オミクロン株についての情報がある程度明らかになるまでの念のための臨時・異例の措置」として、外国人の新規入国を原則停止。その後、「人道上、国益上の観点」から認めるとした留学生の入国可能枠は、約14万7千人に上る待機留学生のうち、現時点でわずか0・2 %の約400名にとどまる。オミクロン株の流入から2ヶ月が過ぎて科学的知見が次第に明らかになり、国内外の感染・防疫状況が大きく変化する中にあっても、首相は入国禁止措置を「水際対策の骨格」と言い換えて延長を繰り返してきた。卒業や進級を間近に控え、留学生らの将来にとって死活的に重要な年度末が迫る中、日本政府の月内の対応が注目される。
★日振協加盟校の留学生 高等教育機関への進学率は75%
日本語教育振興協会(日振協)の加盟校を対象とした直近の調査によると、令和2年度中に日本語学校を修了した外国人留学生で進路状況が判明した2万420人のうち、75%に相当する1万5356人が、大学や専門学校等の高等教育機関に進学していたことがわかった。
出身国(地域)別の進学者内訳は中国が7255人と最多で、ベトナム(4666人)、ネパール(1364人)、インドネシア(272人)、スリランカ(269人)、台湾(257人)、ミャンマー(242人)などが続く。
各国(地域)別の動向では中国人学生は62%が大学・大学院へ進んでいる一方で、ベトナム人学生の85%及びネパール人学生の92%が専門学校へ進学している。大学院は進学留学生の94%を中国人学生が占める。これらの傾向は例年とほぼ変わっていない。
一方で日振協の加盟校のみの統計による令和3年度学生数(7月1日現在)は前年度より1万人近く減の1万4580人。統計上の学校数(今年1月31日現在246校)は前年度から6校しか減っていないので、長引く入国制限が各校ごとの学生数の減少に直結したとみられている。
なお上記の調査はいずれも日振協加盟校が対象で、日本語教育機関全体の状況は反映されていない。
★指定宿泊施設で3日間待機にカンボジアなど追加
日本政府は2月5日より水際措置を一部変更することを決めた。カンボジア、キルギスなど4か国(地域)からの入国者が、新たに検疫所宿泊施設における3日間待機の対象となる。現時点ではアジア諸国で同待機国(地域)に指定されているのは、6日間待機が韓国、3日間待機がモンゴル、インド、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、スリランカ、タイ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、カンボジアとなっている。いずれも退所(入国)後7日目まで自宅等待機が求められる。
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自民党外交部会は2月1日、緊急性や公益性が高いとして文部科学省から示された計400名の留学生の入国を例外的に認める方針を了承した。部会関係者が明らかにしたところによれば、「特段の事情」で入国させる対象として、留学生、文化芸術、サッカー等スポーツ選手、量子コンピューターの科学技術者等について文科省側から説明があり、留学生400名の入国も部会において認められたという。この400名の中には、先般許可済みの87名に加え「今回も相当割合を占める(関係者)」とされる国費留学生が含まれているとみられる。
文部科学省の関係筋は『留学生新聞』の取材に対して、今回の措置は先月先行して許可された国費留学生87名に続くもので、2月末まで原則として新規入国が認められない中、初めて私費留学生が含まれる点に意義があると語った。
※私費は高校留学生が相当数 大学は国費が主体
一方、別の関係筋によれば、今回追加で認められる私費留学生の中には高校留学生が相当数含まれており、大学の受入れ枠は国が「公益性が高い(関係筋)」と判断した国費留学生が主体となる見通し。日本語教育機関の数はわずかに止まるという。
日本政府が現在、「特段の事情」による入国を容認する対象例として示しているのは、
*卒業・修了まで1年未満となり、入国ができないことで修了に支障をきたすことが懸念される国費留学生
*実習等が多くを占めており、早急な入国が必要な医学、生物学、芸術分野等の国費留学生
*卒業に向けた要請が強い高校2、3年生等
*日本語教育機関を年度内に修了後、令和4年4月に大学等へ入学予定の留学生
*その他、二国間交流プログラム等の国費事業への参加者、
となっている。
今後もさらに緊急性が高いと判断される留学生には入国が許可されることが見込まれる一方で、1日の自民党部会では「過度の緩和への慎重意見も出た」としており、本格的な緩和にはなお曲折が予想される。
★早大が外国人留学生数を公表
早稲田大学は2021年11月1日時点で在籍している外国人留学生数を明らかにした。学部が978名、大学院が1726名、日本語教育5名の計2709名で、うち95%の2580名が私費留学生。大学院生で正規生は修士1171名、博士471名となっている。
留学生の出身国・地域別では中国が1867名で全体の68%を占め、韓国(250名)、台湾(120名)、アメリカ(49名)、インドネシア(48名)、タイ(40名)、ベトナム(30名)などが多い。
なお上記は、いずれも有効な在留資格「留学」の所持者で、調査基準日においてその在留資格が有効であることが早大留学センターによって確認されている学生の数。休学中や海外留学中の学生、及び「留学」以外の在留資格を所持する外国籍者は含まれていない。
★鎖国の長期化が交換留学の一時停止へと波及
日本政府が海外からの留学生等の入国を原則停止し続ける中、日本人学生の国際交流にもじわじわと影響が出始めている。南山大学(愛知県名古屋市)の関係者は、同大学の協定校の一つから「日本政府が国境を閉じていて、このままいくとインバランスの問題が出てくるから、交換留学を一時止めたい」との連絡があったことを明かした。同関係者は「学生を海外に出すことを事実上許可する一方で、受け入れはしない日本政府の政策の結果はいろんなところに出てくる」と今後の影響を心配している。
また別の大学関係者は長引くコロナ禍により、海外からの交換留学生は「事実上3年続きで受け入れられないことが確定的となっている」と語った。提携先からは「日本からの交換留学生だけが留学可能な状況が何年も続いているのは不公平」との指摘も出ているという。日本政府による鎖国政策が更に長期化すれば、交換留学協定の見直しや、海外の留学希望者の他国への流出にとどまらず、日本語や日本研究そのものを敬遠する動きがさらに広がる事態にもなりかねない。
大学関係者からは、海外留学や現地フィールドワークへの参加が物理的に難しくなったことで、グローバルな学生交流や語学学習に対する日本人学生のモチベーションが下がっているとの指摘も出ており、双方向での悪影響が懸念される。
北米の日本研究者ら100名以上は先月、留学生や研究者の入国を認めるよう求める書簡を日本政府に送った。
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自民党の河野太郎・広報本部長は29日、自身の公式サイトで、在留資格認定証明書を取得しながら日本に入国できない留学生が約14万7千人いる現状を改めて取り上げた上で、現時点での対応状況に言及した。河野本部長は留学生の新規入国について「公益性や緊急性の観点から個別の事情を勘案」して認めるとしている政府の説明は「全く充分ではありません」と指摘。「入国を待っている学生達が、先を見通してきちんと計画を立てられるよう、開国の方針を早急に明確にするように求めています。」と政府に対応を促していることを明らかにした。
★昨年の来日外国人15万人止まり 鎖国の影響深刻
出入国在留管理庁によれば、2021年の1年間で新たに来日した外国人の総数は15万1726人で、前年に比べ95%減となった。この内、在留資格「留学」は同76%減り1万1651人で、留学生が日本で就職する際の主要な在留資格「技術・人文知識・国際業務」は同87%減の2532人、「特定技能1号」は同70%減の1093人。全ての新規入国者を出身国・地域別にみると、多い順にベトナム(2万4623人)、中国(1万9374人)、米国(1万3631人)、英国(5949人)、韓国(5500人)、フィリピン(5405人)となっているが、これら主要国は対前年比で軒並み7-9割強の減少と総崩れの状況だ。
日本政府は昨年1月以降、厳格な水際措置をほぼ通年で継続しており、影響が数字に表れた形だ。経済界はこうした状況に危機感を強めており、主要3団体の首脳らが政府に対し鎖国状態の早期解消を求めている。
★鎖国政策に沈黙続ける知事会 水際対策維持を提言
一方で全国知事会の新型コロナウイルス緊急対策本部は28日、再度政府への提言をまとめたが、水際対策については「世界各国・地域でのオミクロン株の継続的な増加を踏まえ、水際対策を維持する」とする従来方針を引き続き堅持した。各地域では留学生に加え、技能実習生など外国人が新規入国できないことに起因する就労人材の不足など弊害が様々な形で伝えられるが、各知事の間からは、政府の鎖国政策に異を唱える声は皆無に等しい状況となっている。
★オミクロン株流行地域からの入国者 待機7日間に短縮
政府は29日から水際措置を一部簡素化し、オミクロン株が支配的になっている全ての国・地域からの帰国者と入国者について、自宅又は宿泊施設での待機期間を10 日間から7日間に変更した。国内における濃厚接触者の待機期間短縮に合わせた措置で、現時点では全ての国・地域が対象。
なおオミクロン株以外の変異株流行地域は、自宅等待機期間が14日間となる。
★国大協、複数国立大が留学生選抜で連携も視野に
国立大学協会(国大協)は、2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度について基本方針を発表した。外国人留学生の受入れ拡大については、グローバル化の進展の中で「喫緊の課題」と位置づけ、一例として「複数の国立大学が連携して外国人留学生を選抜し、受入れ希望大学を調整するなどの外国人留学生受入れシステムの構築について検討」する考えに言及している。いわゆる「高大接続システム改革」において留学生選抜の在り方が議論されていない状況を踏まえ、国大協として検討の方向性を示した形だ。
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厚生労働省が1月28日に公表した「外国人雇用状況」によれば、日本国内の外国人労働者数は昨年(令和3年)10月末時点で172万7221人となり、対前年比では0・2%増だった。統計上は過去最高の数だが、留学生アルバイトの数が同12%減となるなど、新型コロナウイルス感染症の影響も随所に表れた。
外国人労働者を在留資格別に見ると、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「特定技能」など留学生が卒業後の就職に際して取得することが多い「専門的・技術的分野の在留資格」の該当者が約39万4千人に上り、「技能実習」は35万1千人、「特定活動」が約6万5千人となっている。「専門的・技術的分野の在留資格」の内、「特定技能」は6万5928人で前年からの増加率が44%と最も高かった。この他に「永住者」や「定住者」、「日本人の配偶者等」といった「身分に基づく在留資格」で働く人が約58万人いる。
また本来の在留目的に応じた活動をしながら、アルバイト等の「資格外活動」に従事する人が約33万4千人おり、この内「留学」生アルバイトに該当する人は26万7594人で対前年比3万8963人減(-12・7%)となっている。長引くコロナ禍により全国的に廃業・休業した事業所などが相次ぎ、留学生のアルバイト先が少なくなった影響が顕著に表れた形だ。なお留学生アルバイトを出身国・地域別の内訳で見ると、ベトナム(10万9583人)、中国(7万730人)、ネパール(3万6406人)、韓国(6504人)、インドネシア(4748人)などが主要な構成国だ。
一方、外国人労働者全体の出身国・地域別では、約45万3千人と最多のベトナムが全体の26%を占め、次いで中国(約39万7千人)、フィリピン(約19万1千人)、ブラジル(約13万4千人)、ネパール(約9万8千人)、韓国(約6万7千人)、インドネシア(約5万2千人)の順となっている。主要な就労形態は出身国ごとに異なり、ベトナムとインドネシアは「技能実習」が半数前後を占めているが、中国と韓国は「専門的・技術的分野の在留資格」がそれぞれ3割と4割に達する。フィリピン及びブラジルは「身分に基づく在留資格」が圧倒的な比重を占める形だ。
外国人を雇用する国内事業所数は約28万5千箇所で、産業別では製造業が27%を占め、サービス業や卸売業・小売業も多かったが、外国人労働者数と事業所数の双方で増加率が目覚ましかったのは「医療・福祉」だった。
都道府県別の外国人労働者数では、東京都(約48万5千人)、愛知県(約17万7千人)、大阪府(約11万1千人)がトップ3となった。
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~同友会と新経済連盟が連名で緊急意見/経団連会長は経産相に要望
経済同友会の櫻田謙悟、新経済連盟の三木谷浩史の両代表幹事は27日、連名で新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急意見を発表した。意見では、ワクチン接種の促進、感染症法上の2類から5類への位置づけ見直しなどの提言と共に、「海外往来の再開」という一項目を設定。▶海外人材、特に海外留学生の新規入国を早期に再開し、その際、入国にあたっての規制・ルールは、日本人帰国者と同等にする、▶ワクチンを接種済みの渡航者の自己隔離等は、国内での接種実績と同等の扱いにし、国内状況に応じて期間を短縮・撤廃する、などを求めている。また留学生受入れについては、「日本の新規入国規制は、世界的に見て極めて厳格との指摘がある。これが一因となり、海外留学生が留学先や語学選考を変更し、優れた人材が日本から離れていくことによる長期的な損失は計り知れない」との一文を併記。日本政府に受入れの早期再開を重ねて要望した。
一方、日本経済団体連合会(経団連)の十倉雅和会長は同日、萩生田光一経済産業大臣と会談し、外国人留学生が入国できない状態が続いていることも踏まえつつ、水際対策の緩和の重要性を指摘。国内外でオミクロン株が支配的となったことから、(1)入国人数制限の緩和、(2)外国人の入国許可、(3)入国後の隔離期間の短縮と運用の合理化、について、日本政府が現行の水際措置を早急に見直すよう要請した。
経済界は先週来、政府の鎖国的な外国人入国禁止政策に対して相次ぎ声を上げ、往来の制限で各業界が疲弊しイノベーションにも大きな障害となるとして、反対の姿勢を鮮明にしつつある。昨日の各団体首脳による動きも、一向に政策変更の兆しが見えない岸田政権に対し、改めて強い意志を示したものとみられる。
★留学生・研究者の入国 「個別の事情を勘案し検討」を繰り返す
一方、小野日子外務報道官はこれに先立つ26日の会見で、先般、米国とカナダの日本研究者らが日本政府に対して留学生や研究者らの入国を認めるよう求める書簡を送った件について、「様々な形でご指摘もあるということは承知している」としながらも、「そういったところも踏まえつつ、特段の事情による新規入国については、厳格化して運用化していくこととしている。引き続き個別の事情を勘案しながら、必要かつ適切な対応を継続していく方針だ」と述べた。さらに「例えば留学生や研究者の入国についても、そういった個別の事情を勘案しながら、今後検討していく」と、同様の見解を繰り返した。
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