インフォメーション
日本語教育機関の団体連絡協議会は5日、「新型コロナウイルス対策ガイドライン」を再度改定した。同ガイドラインは日本語教育機関が自主的な感染症防止対策を行うため2020年8月に初版を定めたもので、内閣官房の指示による修正を経て第6版となる今改定では、オミクロン株の特性に合わせ、従来の対応を簡素化する内容を盛り込んだ。
まず各教育機関で感染が判明した際の初期対応に関して、これまでは保健所の指示を受けるのに時間を要する場合には、各機関の判断により濃厚接触者の候補者を自宅待機にするとしていたが、現行の政府方針に合わせる形で、「教育機関においては、濃厚接触者の特定・行動制限を行う必要はない」と改めた。同時に、重症化リスクが低いと考えられる場合には医療機関の受診が必須でなくなったことから、「都道府県のホームページを確認の上、対応する」に変更された。
また感染確認時の授業対応についても、従来はクラス内で感染が広がっている可能性が高い場合、「オンライン授業への切替又はクラス閉鎖を実施する」としていたが、「実施する」という表現が「判断する」に弱まり、臨時休校は学生の学びの保障などに留意しつつ「必要な範囲、期間において機動的に対応を行う」よう求めた。
具体的な感染対策では、三密回避やマスク着用、手洗いの励行等と併せ、「換気」の具体的な取り組みに言及。「室温及び相対湿度を18-28℃および40-70%に維持」できるよう、2方向の窓を常時開放することや、換気用ファンの使用など補完的な措置を推奨している。
★「人材育成奨学計画」でキルギスの行政官20名を受入れ
政府は日本留学を通じて発展途上国(21か国)の人材育成を無償支援する「人材育成奨学計画(JDS)」で、キルギス共和国を来年度も供与の対象とする方針を決めた。5日に同国の首都ビシュケクで、双方の関係者が書簡に署名した。最大20名(修士19名、博士1名)の若手行政官を日本の大学院で受入れ、学位取得を支援する。供与限度額は3億2300万円。
事業の実施主体である独立行政法人国際協力機構(JICA)によれば、キルギスへの支援は2007年以降毎年実施されており、昨年までに同枠組みで受入れた留学生は、のべ248名に上るという。
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政府は現在、入国者が来日前に滞在していた国・地域によって検疫対応を分けているが、9月7日午前0時以降、グループ分けの区分を再度見直す。最も流入リスクが高いと位置づける「赤」グループの国・地域を無くする一方で、ややリスクが高いと位置付ける「黄」グループには、新たにアルバニアとシエラレオネを加える。これにより「黄」区分に属する国と地域の数は73に変わる。留学生の来日者が多いアジアでは、ベトナム、スリランカ、インド、パキスタン、マカオ等が、引き続き「黄」区分のままだ。
一方で7日0時以降は、有効なワクチン接種証明書(3回分)を保持している全ての入国者について、出国前72時間以内の検査証明書が不要となる。これに伴い、入国前後の検疫対応は大別すると3パターンになる。
まず①水際区分が「青」或いは「黄」のいずれに該当する場合でも、ワクチン接種証明書があれば、出国前検査も到着時検査も不要だ。また②水際区分は「青」だが、ワクチン接種証明書がない場合には、出国前検査が必要で、到着時検査は不要とし、③水際区分が「黄」で、ワクチン接種証明書がない場合には、出国前検査と到着時検査の両方が必要となる。また入国後の待機期間は、上記①、②の場合は不要、③の場合は5日間(注:待機3日目に検査で陰性確認の場合は3日間に短縮)が課される。
★上陸拒否対象国・地域の指定を全面解除
政府は新型コロナウイルス感染症の拡大以降採ってきた、世界各国に対する「上陸拒否対象地域」の指定を全面的に解除した。最終的には、日本上陸前の14日間以内に41の国・地域に滞在歴がある外国人について、入国拒否の対象としていたが、9月4日午前0時をもって、これらを一斉に解除した。同日時点で指定地域から外れたのは、アフガニスタン、イラク、ケニア、ナイジェリア、ブルガリアなどの国と地域で、アフリカと中東諸国が大半を占める。
これに伴い、原則上は世界全ての国・地域から、日本への入国が可能となったわけだが、実際には、同指定が解除された後も、日本への入国を希望する外国人は再入国の場合を除き、入国前に査証(ビザ)取得が必要とされる運用は変わっていない。すでに実施済みの「ビザ免除措置の停止」と「発給済みビザの効力停止」は引き続き継続される。今回の「全面解除」自体は、あくまでも象徴的な意味合いに止まりそうだ。
★「次の感染症危機」向け対応策を決定 水際対応で罰則にも言及
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は9月2日に開いた会合で、「次の感染症危機に備えるための対応の具体策」を決定した。政府の司令塔機能の強化や保健・医療提供体制の整備が主な内容となっているが、検疫法の見直し関連では「水際対策の実効性の確保」にも言及している。
「対応の具体策」では、新型コロナなど国民の生命・健康に重大な影響を与える恐れがある指定感染症について、感染者に居宅等での待機を指示できるようにし、待機状況の報告に応じない場合に適用可能な罰則を創設することを盛り込んだ。
また施設待機等の措置が必要な場合に、検疫所長が宿泊施設の開設者に対して施設提供などの協力を求めることができるようにし、平時から都道府県とも連携の上で医療機関と協定を締結する仕組みを整備することも謳っている。
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日本への入国者が事前に検疫手続きの一部を完了する「ファストトラック」では、「My SOS」のWebまたはアプリを使い、検疫に必要な書類などを事前登録するが、厚生労働省は改めて運用の見直しを行う。日本時間9月7日の午前0時以降は、利用者が「ワクチン接種証明書」または「出国前72時間以内の検査証明書」のいずれかを事前登録して、審査が完了すると、順次、画面が緑色または青色に変わるようになる。政府は同日より現行の水際対策を緩和し、日本入国時に求めてきた「入国前72時間以内の陰性検査(証明書)」について「ワクチン接種証明書(接種3回)」で代替できるようにする方針を決めており、「My SOS」の運用変更はこれに伴う措置となる。
今回の変更はシステムの切り替え以降、入国予定日が近い対象者から順次反映される形になるため、登録してから画面に反映されるまで最大2日程度の時間を要することがあるという。またもし7日0時の切り替え時よりも前のタイミングで、ワクチン接種証明書の登録を行っていた場合には、審査完了後も黄色画面のままとなっている場合があるが、同時刻以降に順次、画面の色が緑または青に変わる。
厚労省では利用者に対して、日本入国予定日から2週間以内を目途に、事前登録を行うよう呼びかけている。
★日本語教育推進で6億円増の16.8億円を概算要求
来年度予算の概算要求で、「外国人等に対する日本語教育の推進」に関する予算総額が16億8600万円と、今年度(10億2800万円)より約6億6千万円増額されていることがわかった。「外国人との共生社会の実現」を国策に掲げる政府は、留学生や外国人労働者らの増加を見据え、日本語教育を重要な柱として位置づけており、所管の文化庁では令和5年度予算において、日本語教育の環境整備を進めるための多様な予算措置を盛り込んだ。
中でも、政府の「骨太の方針」などで重要性が明記されている「地域の日本語教育の総合的な体制づくり」には、地域全体の日本語教育を統括するコーディネーターと総合調整会議の配置や、「生活」に関する教育課程を置く機関の設置に向けた準備を明記。日本語教育機関との連携等の取組に対して、補助率を加算する方向性も打ち出すなど、今年度比1億8500万円増の6億8500万円を要求した。同様に、日本語教室の空白地域を解消するための教室開設や、インターネットを活用した教材開発にも予算を拡充するよう求めた(要求額2億700万円)。
また日本語学習や教育の共通指標として設けた「日本語教育の参照枠」を活用して、生活、留学、就労などの分野で教育モデルや教材開発を行う取組も引き続き支援する。(要求額は今年度同額の2500万円)。
さらに来年度予算では、質の高い日本語教育を提供する上でカギを握るとされる人材育成と資格整備を特に重視。具体的な措置としては、▶日本語教師の新たな資格に関する試験システムの導入や試行試験等の実施経費として今年度比1億8千万円増の2億3100万円、▶日本語教師の養成と研修、学び直しや復帰促進関連で同1億900万円増の3億1千万円が、それぞれ要求事項に盛り込まれた。
なお、これらとは別に、難民への日本語教育に関する予算の拡充(1億6500万円)も求めている。
日本語教育をめぐっては今後、「地域における日本語教育の在り方について」の文化審議会国語分科会によるとりまとめや、日本語教育機関の認定制度等に関する新たな法案の提出が見込まれており、国を挙げて計画的な環境整備が進められる見通しだ。
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〜来年度予算の概算要求:留学生や日本語教育関連の概要が判明〜
文部科学省は令和5年度予算の概算要求で、「優秀な外国人留学生の戦略的な受入れ」経費として260億円を盛り込んだ。今年度予算比では2億円の減額要求で、片や日本人学生の海外留学活性化へ向けた支援強化には同15億円増の86億円を計上した。先に岸田文雄首相が「『留学生30万人計画』を抜本的に見直し、留学生受入れだけでなく送り出しを加えた、新たな計画」の策定を指示したことも反映し、バランスに腐心した内訳となっている。
この内、受入れ関連では、外国人留学生向けの奨学金制度で学習奨励費(留学生受入れ促進プログラム)が今年度より308人分減らされて6746人分を見込むが、国費外国人留学生は現行枠(1万1344人)がそのまま維持された。奨学金関連の対象者が絞られた一方で、コロナ禍により急激に落ち込んだ留学生の国内就職立て直しを主眼に、「留学生就職促進プログラム」予算を9千万円増やし1億6千万円としたほか、「高度外国人材育成課程履修支援制度」として新規1千人分を計上している。日本学生支援機構(JASSO)関連では今年度比で、運営交付金が1億円、施設整備費補助金が2億1千万円、それぞれ減額された。
また上記とは別に、「日本語教育の質の向上」関連で、日本語教師の新たな資格試験システムの導入や試行試験等の実施経費として同1億8千万円増の2億3100万円が、また日本語教師の養成と現職日本語教師の研修事業向けに同1億900万円増の3億1千万円が、いずれも盛り込まれた。
高等専門学校関連では、引き続き、「KOSEN(高専)」の海外展開に向けた予算が組み込まれた。「重点3か国」と位置づけるモンゴル、タイ、ベトナムへの高専制度導入支援や、留学生の日本語教育体制の強化を目指すとしている。
★在留カードとマイナンバーカード一体化へ システム改修費を要求
一方、法務省は令和5年度予算に関連し、「外国人材の受入れ・共生社会の実現に向けた取組の推進」として、今年度比40億円増の271億4700万円を概算要求した。外国人在留インフォメーションセンターの拡充や、ウクライナ避難民への相談対応のほか、日本人を対象とした外国人との共生に関する意識調査の経費も含まれる。「デジタル化の推進」関連では、在留外国人が所持を義務づけられている在留カードとマイナンバーカードとを一体化し、利便性の向上を図るとして、必要となるシステム改修の費用も盛り込んでいる。また日本企業の海外進出などに対応し、法令の外国語訳を推進する考えも打ち出した。葉梨康弘法務大臣は30日の閣議後会見で、「2025年までに千本以上の英訳法令の公開を目指す」と述べ、ネイティブアドバイザーや法令翻訳のコーディネータ―のほか、AI翻訳についても充実を図るため、今年度予算で増額を目指す方針を明らかにした。
★「特定技能」12分野の受入れ上限数を閣議決定
~コロナ禍の影響踏まえ、分野ごとに大幅見直し
政府は8月31日、在留資格「特定技能」の運用に関する見直し方針を閣議決定した。新型コロナウイルス感染症の拡大で経済情勢が大きく変化していることを踏まえ、ほぼ全ての分野について外国人の受入れ想定数を見直した。
新たな運用方針によれば、「特定技能」の受入れ対象となる全12分野の内、今回受入れの上限数が最も増えるのは「飲食料品製造業」で、5万3200人増の8万7200人。同分野における都道府県別の有効求人倍率が、地域によっては5~7倍に高止まりしており、コロナ禍の影響を考慮しても、なお人材ニーズが不足すると見込んだ。また今春に3分野を統合した製造分野の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」も、1万8300人増やして4万9750人とする。「農業」分野については、3万6500人の現行枠をそのまま維持する。
これらを除く9分野に関してはいずれも、現行の受入れ上限数が削減された。減少幅が特に大きかったのは「外食業」(2万2500人減の30500人)と「ビルクリーニング(1万7千人減の2万人)」、「宿泊(1万800人減の1万1200人)」の3分野。これらはコロナ禍による需要減少が特に甚大な業種であり、海外人材の来日にも支障が出ていた。
また分野別ではこれまで最多の受入れ数が見込まれていた「介護」も9100人減の5万900人となり、急増した「飲食料品製造業」を下回った。
さらに、建設(6千人減、3万4千人)、漁業(2700人減、6300人)、造船・舶用工業(2千人減、1万1千人)、航空(900人減、1300人)、自動車整備(500人減、6500人)の5分野も、上限数が相当割合減る形となった。
政府は上記の受入れ上限数について、当初、大きな経済情勢の変化が生じない限り、令和6年3月までを目途とするとしていたが、今回大幅な変更に踏み切った。なお、特定技能の受入れ総数は34万5150人で従来と変わらない。分野ごとの新たな上限数は当面、来年末を期限とする。
※日本語試験の方式も柔軟運用が可能に
一方、特定技能外国人の日本語能力を測る試験としては、これまで「国際交流基金日本語基礎テスト」と「日本語能力試験(N4以上)」の2試験が全分野において採用されてきたが、出入国在留管理庁では、先に文化審議会国語分科会で「日本語教育の参照枠」が取りまとめられたことにより、各日本語試験団体が実施する日本語試験についても、共通の指標による評価が可能になったと判断。今後は必要に応じて柔軟に、他の日本語試験を追加できるよう規定を整備する方針も固めた。 新たな日本語試験の追加については、試験実施機関からの申請を受け、分野を所管する省庁が法務省の確認なども踏まえ判断するという。
在留資格「特定技能」は、外国人留学生が日本の教育機関を修了後、日本で就職する際の受け皿ともなっていて、今回の運用見直しは一定の影響を与えそうだ。
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~岸田首相、「G7並みの円滑な入国へ、さらに緩和進める」~
岸田文雄首相は31日午前、対面での公務を再開するにあたって会見を行い、新型コロナに対する当面の政府方針を明らかにした。この中で水際対策に関し、9月7日より入国者数の上限を一日あたり5万人に引き上げるとともに、全ての国を対象に、添乗員を伴わないパッケージツアーによる入国を可能とする考えを明らかにした。個人観光の解禁には言及しなかった。今後については「G7並みの円滑な入国が可能となるよう、さらに緩和を進めていきたい」と述べた。
また首相は、入国時の検疫手続きを簡素化する「ファストトラック」に必要な、健康居所確認アプリ「My SOS」を改善し、「空港での入国手続き円滑化を行う」考えも表明した。
※7月の一日あたり入国者は1万4千人、本格回復には追加緩和が不可避
政府は目下、海外から入国・帰国する人向けの水際措置として、入国者数の一日あたり上限総数について2万人を目途として設定しているが、出入国在留管理庁によれば、7月の入国者は単日平均値で1万4345人となっている。この内訳を見ると、日本人渡航者で帰国した人が8581人、外国人の再入国者が2170人で、これらを除く外国人の新規入国者は一日あたり3594人となっている。
新規入国者(単日平均値)の内訳では、短期滞在が2149人、技能実習が407人、留学が330人などとなっていて、留学は4月のピーク時に1500人を超え、5月も千人近くに達したが、入学シーズンの経過とともに、現在の水準に落ち着いた形だ。
現状では入国者の上限数が5万人に引き上げられたとしても、すでに留学や技能実習などの中長期在留者については、水際緩和前における入国待機組の内、相当割合が入国済みであり、今後も大幅に増えるとは言い難く、回復のカギを握るとみられるのは観光客だ。政府は6月より、添乗員付きの団体観光に限り入国を解禁したが、翌7月の入国者は一日あたりわずか225人に止まっている。当初、日本への旅行を希望していた外国人の間では、複雑なビザ申請手続きや防疫措置に加え、個人旅行が制限されていることから、日本を敬遠する傾向も顕著だという。
岸田首相は「G7並み」の水際措置を標榜する一方で、感染状況をにらみながら小出しの緩和を続けており、入国者総数引き上げが入国者数自体の本格回復につながるまでには、もう一段の追加措置が求められそうだ。
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