インフォメーション
日本語教育機関の6団体は、新型コロナウイルス感染症デルタ株への対応をさらに強化するため、業種別の対策ガイドラインを再改訂した。昨年8月に制定したものを数度にわたって変更しており、今回が第5版となる。併せて6団体では、新型コロナ対策がきちんと行われているかを計79項目で確認できるチェックリストも設けている。
改訂版では現下の感染抑止状況について、国内のワクチン接種率は高まったものの、今後更なる変異株の流行も見込まれることから、当面の間は感染症との共存が必要として、対策が求められる内容を追加した。
まずマスクの正しい着用について、職員室での会話時や学内のゴミ廃棄時、及び空港への学生の出迎え時等にも留意するよう追記。授業中の換気ではCO2センターや加湿器等の活用でCO2濃度1000ppm以下、湿度40%以上とすることを推奨した。
また日本語教育機関が運営している留学生向けの寮についても、改善項目を提起。寮の自室は「個室となることが望ましい」として、やむを得ず複数名が同一の部屋で生活する場合にはパーテーション等で個人のスペースを区切り換気に努めることや、食堂利用の際は対面を避け間隔を1メートル空けた配席として、同時にアクリル板パーテーションの設置も行うよう求めた。
今回のガイドライン改訂も、内閣官房コロナ室の指示に基づくものであり、新規感染者が激減する中でも、感染対策を継続していく方針が色濃く反映されている。
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末松信介・文部科学相は26日の会見で、私費外国人留学生に対する入国制限の現状に関して、新規入国の一時停止が「外交及び教育・研究分野のみならず、地域社会や経済にも大きな影響を与えている」として、「引き続き国内外の新型コロナウイルス感染症の流行状況を踏まえながら、私費留学生を含めた外国人留学生の入国の早期再開に向けて、関係省庁と調整をして参りたい」と述べた。
国費留学生の一部に限定して日本政府が受入れを「解禁」したのは今年5月であり、その後、感染状況の深刻化を受けて、私費留学生受入れ再開をめぐる検討は一向に進んでこなかった。ここにきて国内の新規感染者も激減しつつあり、自民党など主要政党は今後目指す施策の中に感染拡大防止と両立させた形での留学生の入国再開を盛り込んでいる。31日の総選挙後に、関係省庁間における実質的な調整が進むのか、国内外からの注目が集まる。
コメント内容は下記の通り。
【末松信介・文部科学相のコメント】
「現在、政府では新型コロナ感染症の拡大防止の観点から、全ての国・地域からわが国への外国人の新規入国を原則一時停止している。外国人留学生の大部分の方が新規入国できていない状況にある。文部科学省としては、外国人留学生の新規入国の停止は外交及び教育・研究分野のみならず、地域社会や経済にも大きな影響を与えているので、関係省庁と協議の上、まず国費留学生の一部の留学生について段階的に入国を再開しているところだ。もちろんPCR検査をし、陰性を確認しながらで(従来と)同じ対応だ。引き続き国内外のコロナウイルスの流行状況を踏まえながら、私費留学生を含めた外国人留学生の入国の早期再開に向けて、関係省庁と調整をして参りたいと思う。やはり来ていただけないことにはこちら側の学生も留学できないという状況であるし、親日的な方をきちっと生み出すというか誕生させないといけないので、そういう点では有意義な意見だと思っている。」
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日本政府はワクチン接種証明書の保持者に対し入国後の待機期間を短縮する水際緩和策を実施しているが、28日より同措置の適用対象として新たに、韓国、ブルネイ、UAEなど8か国・地域を追加する。具体的には入国後に原則14日間求めている自宅等での待機期間について、入国時にワクチン接種証明書のコピーを検疫所に提出し、さらに待機10日目以降に自主的に受けた検査で陰性が証明された人が陰性結果を入国者健康確認センターに届け出ると、残りの待機期間が免除となる。証明書が有効とみなされるワクチンは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ(コビシールド含む)の3社製に限定され、2回目の接種から14日間以上経過していることが求められる。
アジア域内ではすでに香港、ベトナム、マレーシアなどが同措置の対象となっていて、今回の韓国とブルネイの追加で、域内対象は10か国・地域に増えた。なお現時点で入国時に指定宿泊施設で6日間の待機が必要なフィリピンなど9か国・地域には、この短縮特例は適用されない。
留学生の新規入国が停止されたままとなっている現状では、再入国者を除きこれに伴う大きな影響はないが、今後の受入れ再開時にはワクチン接種証明書や陰性証明書を水際緩和策とリンケージさせる方向性が有力とみられ、今回の緩和策も「感染拡大防止と両立できる受入れ体制を確立(自民党総合政策集J-ファイル)」させていく流れの一環とみることができる。
★待機期間中の誓約違反で氏名公表 のべ60名に
一方、水際対策に関連して厚生労働省では、入国後の14日間の待機期間中に、本人が誓約事項であるビデオ通話に応じなかったり、健康状態の報告を怠った場合、在留資格を所持する外国籍者については氏名、国籍等の「感染拡大防止に資する情報」を公表し、在留資格取消や退去強制手続きの対象となり得るとしている。同省によれば10月25日現在で、日本国籍者を含め、のべ60名が公表対象になったという。
この内、直近の3回分(10月19、22、25日公表分)を見ても、待機期間中に「健康状態の報告、位置情報の報告、及びビデオ通話への応答が一度もなかった」計7名の外国籍者について、氏名(アルファベット表記)と出発国、年代、日本国内の居所、入国後の行動歴等が公表されている。同7名に関しては、年齢別で留学生に多い10代や20代に該当する事例は1件もない。ただ過去の事例では、入国時に検疫所で登録した携帯電話の不具合などにより、健康報告や連絡が滞ったケースもあるという。不注意などからいったん公表対象とされてしまえば、在留資格取消の対象ともなり得るため、入国者には定期連絡に関して細心の対応が求められる。
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自民党の政務調査会はこのほどまとめた「総合政策集2021 Jーファイル」の中で、「留学生の入国再開と受入れ体制の確立」という一項を設け、留学生を「わが国の社会、経済の活性化に不可欠な存在」だとして、「水際での適切な防疫措置を講じながら早急に留学生の入国再開を実現」する方針を明記した。同時に、日本が「留学先として選ばれる国となるためにコロナ禍においても、感染拡大防止と両立できる受入れ体制を確立し、内外にそれを周知」するとした。
一方で「Jーファイル」では同時に、留学生の適切な在籍管理を図るため、「在籍管理が不適切な大学などに対する厳格な対応」を行い、日本語教育機関については「告示基準の見直しに基づく運用」を着実に実施することにも言及している。
2,★8月の「留学」新規入国者は286人 年初からの累計は7743人に
今年8月の1か月間に在留資格「留学」を取得して新規で日本へ入国した外国籍者が286人だったことが、関係機関のまとめでわかった。いずれも「特段の事情」により入国を認められたケースとみられるが、今年度に入ってからでは最も少ない数。5月から例外的に入国が可能となった国費留学生の来日が一段落した影響もあるとみられる。
新規来日留学生の出身国・地域別内訳では中国とベトナムが各76人ずつで最も多く、台湾(25人)を含めた3か国・地域で6割強を占める。その他に⒑人以上の入国者がいたのは韓国(15人)、タイ(13人)、米国(10人)の3か国となっている。
これにより2021年に入ってから日本へ新規入国した留学生の数は、8月までの累計で7743人となった。
3,※新学期入りを前に 再入国留学生は千人台を回復
一方、9月の新学期入りを前に、在留資格を所持している留学生の再入国は4月以来、4か月ぶりに千人を超えて1164人となった。再入国留学生の半数近くとなる511人が中国出身者で、韓国(215人)、米国(71人)、ウズベキスタン(60人)、台湾(32人)等が続く。
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日本政府が留学生等に対し継続している入国制限など、現行の水際対策を見直すよう求める声が、教育界や留学予定者を中心に相次いでいる。
「日本語教育学会」は今週、外国人留学生の受入れを早期に再開するよう求める立場を表明した。同法人は1962年に発足し、日本語教育に関する学術研究や人材の育成、情報交流を中心に事業を展開している。同会では日本政府の新規留学生に対する入国禁止によって、在留資格認定証明書を受けながら入国を止められた留学希望者が多数に上り、渡日を断念する事例も多く発生していると指摘。①留学生の受入れは多様な言語文化を包摂し、様々な人々が自分らしい生き方を享受できる豊かな社会の実現に必要、②海外の若者に教育の機会を提供することは国際社会の一員としての日本の責務、とする見解を表明した。その上で、日本以外のG7各国が水際対策を徹底した上ですでに留学生の受入れを始めていることにも改めて言及している。
同時に日本語教育学会は、先に同様の見解を発表した「留学生教育学会」と、「コロナ禍の日本留学の扉を開く」の声明に賛同するともしている。
この内、「留学生教育学会」は先月、留学生の受入れ早期再開に関する「緊急アピール」の中で、すでに留学生に門戸を開いた韓国が今年上半期に3.4万人の留学生を入国させ、その内コロナ陽性者は255人で、全員が入国時の検査か隔離期間中に感染診断が行われたケースだったことを紹介。韓国教育部も「留学生が原因となって市中で感染が拡大した事例はまったくない」としており、「感染症制御と留学生受入れが十分に両立できる」ことをアピールしているとした。その上で留学生教育学会では①ワクチン接種記録、隔離、検査など様々な手法を組み合わせた感染抑制策のもと、留学生受入れ早期再開に向けた条件整備、②ビザ交付時や日本入国時に日本の責任でワクチン接種を実施する等、他国への留学との差別化、などを訴えた。
一方、来日できずにいる留学予定者らが相次ぎ窮状を訴えているサイト「コロナ禍の日本留学の扉を開く」は、「日本留学を目指しながら裏切られた思いで過ごしている多くの若者の声」を伝えようと立ち上げられ、連日、世界の若者たちのインタビューを発信し続ける。同サイト上には、仕事や教育の機会を失ったまま母国で待機中の留学予定者や、税金を払い続けながら再入国できずにいる留学生らの肉声が溢れており、ツイッターなどSNSでも大きな反響を呼んでいる。
「扉を開く」では、コロナ禍でも新規入国の留学生によるクラスターは発生していないことや、非常にコントロールされた受入れ体制が整備されていることへの理解を深め、留学生の入国への協力を得たいとしている。
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