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政府は留学生など外国人の新規入国を、条件付きで再開する方向で最終調整に入った。今週中にも正式に発表する方向で、現在詰めの作業を行っている。法務省関係筋は『留学生新聞』の取材に対して、今年1月から停止中のレジデンストラック等とは別の形態で、すでに一部の国費留学生等に対し例外的に入国を認めている「特段の事情」のスキームを援用する方向も検討していることを明らかにした。
日本国内では新型コロナウイルス感染症の感染状況が最近落ち着きを見せているが、依然として再拡大や新たな変異株発生の恐れもあることから、再拡大時には臨機応変に対応できるようにする意向があるとみられる。
受入れ再開にあたっては、学校等の受入れ機関に対して、本人の行動管理など防疫措置を徹底するよう求める見通しだ。
今年5月に国費留学生の受入れが部分的に再開されるにあたっては、文部科学省が文書で各学校の管理責任を確認した上での実施となっていて、もし今回私費留学生についても同様のスキームが求められる場合には、「学校数が膨大で、戻ってくる留学生数も相当数に上ると見込まれるので、相応の事務負担や時間を要するのでは(教育機関関係筋)」との見方も出ている。
法務省関係筋は、入国制限の緩和時期について、今週中にも正式な発表が行われるだろうとの見通しを語った。
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岸田文雄首相は10月31日、衆院選の開票特番に出演し、司会者から「日本の外国人の入国規制に関しては近々に緩和してほしいとの強い要望が経団連からも出ているが」と問われた際に「そういった声が強いのは私も承知をしている」とする一方で、「ただ国民の安心ということを考えると、確かに新規感染者の数は抑えられているが、ここで油断をするというのは国民から見てどうかという部分もある」と、直ちに緩和することについては慎重な姿勢をにじませた。今後の検討方針については「丁寧にではあるが、ぜひ相手の国の状況も考えながら、水際対策についてもあるべき姿、どこまで緩和できるのか、これは追求していきたいと思っている」と述べるにとどめた。司会者からは、日本よりワクチン接種では遅れている韓国に、「国際往来で先を越されるのは困る」との指摘も出ていた。
東京都は、日本の美容師養成施設で学び美容師国家資格を取得した外国人留学生が、最大5年間、日本で就労できる国の制度を活用する方針を決めた。来年度(令和4年度)より、都内全域での実施を見込む。
国が28日に開催した東京圏国家戦略特別区域会議で、「国家戦略特別区域 外国人美容師育成事業」制度の適用を申請した。
同制度は、国が今年7月、特区実施要領に盛り込んだもので、日本の美容製品の輸出促進やクールジャパンの推進、インバウンド需要への対応強化が狙いとされる。
具体的には一定の要件を満たす外国人美容師に対し、美容所等の育成機関が育成事業を実施する場合に、就労を目的とする在留資格を最大5年間認めるとしている。対象となる外国人美容師は、美容師国家資格の他に日本語能力試験N2相当以上の日本語力等が必要。育成機関は監理実施機関に対して育成計画を申請し、監理実施機関は各自治体(今回は東京都)による認可・監督を受ける。一美容所あたりの外国人美容師の育成人数は3人以内と定められている。
都ではこれに先立つ2018年時点で、各ヘアサロン等の受入れ機関による公的管理の整備を前提とする新たな規制改革のスキームを国に提案していた。
現在、美容分野については外国人が日本の美容師国家資格を取得しても、これに対応する在留資格が設けられておらず、同分野を主たる活動内容とする日本での就労は原則として認められていない。一方で日本の美容師養成校等教育機関には外国人留学生も少なからず在籍しており、日本で学んだ高度な専門知識を将来の仕事に活かしたいとか、ヘアサロンで実践経験を積みたいという希望があっても、卒業後は日本で就職できないために帰国を余儀なくされる学生が多かった。
(公社)東京都専修学校各種学校協会が昨秋に実施した「専門学校に在籍する留学生の実態調査」でも、現役留学生の声として、学歴・専門分野による就労制限の緩和を求める意見が出ていた。
今回の東京都による「外国人美容師育成事業」申請は、東京圏に限定した国家戦略特別区域という扱いではあるものの、留学生や外国人就労者に対する国の就業規制緩和に向けた大きな一歩となりそうだ。
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日本語教育機関の6団体は、新型コロナウイルス感染症デルタ株への対応をさらに強化するため、業種別の対策ガイドラインを再改訂した。昨年8月に制定したものを数度にわたって変更しており、今回が第5版となる。併せて6団体では、新型コロナ対策がきちんと行われているかを計79項目で確認できるチェックリストも設けている。
改訂版では現下の感染抑止状況について、国内のワクチン接種率は高まったものの、今後更なる変異株の流行も見込まれることから、当面の間は感染症との共存が必要として、対策が求められる内容を追加した。
まずマスクの正しい着用について、職員室での会話時や学内のゴミ廃棄時、及び空港への学生の出迎え時等にも留意するよう追記。授業中の換気ではCO2センターや加湿器等の活用でCO2濃度1000ppm以下、湿度40%以上とすることを推奨した。
また日本語教育機関が運営している留学生向けの寮についても、改善項目を提起。寮の自室は「個室となることが望ましい」として、やむを得ず複数名が同一の部屋で生活する場合にはパーテーション等で個人のスペースを区切り換気に努めることや、食堂利用の際は対面を避け間隔を1メートル空けた配席として、同時にアクリル板パーテーションの設置も行うよう求めた。
今回のガイドライン改訂も、内閣官房コロナ室の指示に基づくものであり、新規感染者が激減する中でも、感染対策を継続していく方針が色濃く反映されている。
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末松信介・文部科学相は26日の会見で、私費外国人留学生に対する入国制限の現状に関して、新規入国の一時停止が「外交及び教育・研究分野のみならず、地域社会や経済にも大きな影響を与えている」として、「引き続き国内外の新型コロナウイルス感染症の流行状況を踏まえながら、私費留学生を含めた外国人留学生の入国の早期再開に向けて、関係省庁と調整をして参りたい」と述べた。
国費留学生の一部に限定して日本政府が受入れを「解禁」したのは今年5月であり、その後、感染状況の深刻化を受けて、私費留学生受入れ再開をめぐる検討は一向に進んでこなかった。ここにきて国内の新規感染者も激減しつつあり、自民党など主要政党は今後目指す施策の中に感染拡大防止と両立させた形での留学生の入国再開を盛り込んでいる。31日の総選挙後に、関係省庁間における実質的な調整が進むのか、国内外からの注目が集まる。
コメント内容は下記の通り。
【末松信介・文部科学相のコメント】
「現在、政府では新型コロナ感染症の拡大防止の観点から、全ての国・地域からわが国への外国人の新規入国を原則一時停止している。外国人留学生の大部分の方が新規入国できていない状況にある。文部科学省としては、外国人留学生の新規入国の停止は外交及び教育・研究分野のみならず、地域社会や経済にも大きな影響を与えているので、関係省庁と協議の上、まず国費留学生の一部の留学生について段階的に入国を再開しているところだ。もちろんPCR検査をし、陰性を確認しながらで(従来と)同じ対応だ。引き続き国内外のコロナウイルスの流行状況を踏まえながら、私費留学生を含めた外国人留学生の入国の早期再開に向けて、関係省庁と調整をして参りたいと思う。やはり来ていただけないことにはこちら側の学生も留学できないという状況であるし、親日的な方をきちっと生み出すというか誕生させないといけないので、そういう点では有意義な意見だと思っている。」
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