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2021-08-23 14:48:00

日本語教育に関する文化庁報告書 大学に関連するポイントを整理

 

文化庁の調査研究協力者会議は「日本語教育の推進のための仕組みについて」と題する報告書を正式に公表した。先月末明らかになった原案に沿った内容で、新たに創設される「公認日本語教師」資格と、日本語教育を実施する機関の「類型化」について一定の方向性が打ち出されている。今後は同報告書に基づき、新たな日本語教育制度の詳細が検討されていく見通しだ。

(既報「原案」に関する概要は下記本紙バックナンバー2021.7.30参照。)

一連の検討プロセスでは、「公認日本語教師」資格の取得要件や試験内容がどうなるのかや、日本語教育機関の「類型化」に関する制度設計が大きな関心を集めているが、それらとは異なる観点から注目されるのが、大学における日本語教育との関わりだ。大学の学歴や日本語教師養成課程、あるいは既存の留学生別科が、新制度の中でどう位置づけられるかは、今後の日本語教育の展開において重要な意味あいを持つ。今回の報告書から、大学と直接的に関連する内容を抽出すると、主に下記の3つのポイントに集約される。

①大学等の日本語教師養成課程の扱い

報告書では、「公認日本語教師」の資格取得に必要な教育実習を行う「指定日本語教師養成機関」として大学等も想定。先に文化審議会国語分科会が「必須の教育内容」と定めた50項目を履修・修了すれば、資格試験の内、筆記試験の一部と面接を免除する方針を明文化している。大学の日本語教育に関する養成課程については、26単位以上(専門学校等の日本語教師養成研修は420単位時間以上)の取得により免除対象とした。ただ具体的な制度づくりにあたっては、各大学ごとに教育内容が必ずしも一律ではないことに留意する必要性に言及したほか、すでに同課程を修了後に相当程度経過した者が受験する際の取扱いについても、今後検討を要するとしている。

②資格取得要件としての大学学位の扱い

当初、令和23月に国語分科会が示した報告書においては、「日本語教師には幅広い教養と問題解決能力が必要」との理由から、新たな日本語教師資格の取得要件には「学士以上の学位の取得」が含まれていた。だが今回の調査協力会議による報告書では、これら能力について「必ずしも大学・大学院のみで培われるものではない」と述べ、「試験等を通じて一定の知識・技能を有しているか確認」することにより担保できるとして、学士以上の学位を「公認日本語教師」の資格取得要件にはしない方針を打ち出した。そもそも同資格が内閣提出法に基づくいわゆる「名称独占資格」を想定していて、類似の国家資格で学士以上の学位を取得要件としている資格がないことも背景にあるという。

③大学別科の扱い

一方、日本語教育を実施する機関の「類型化」を巡る議論では、多様な学習対象者を念頭に、職務や評価項目の違いから、「留学」、「就労」、「生活」の主要3類型に分類した。このうち類型「留学」を担う機関に想定されるのは「法務省告示日本語教育機関」としたが、焦点の一つとなっている大学の留学生別科の扱いについては、今後「個別の必要性に応じ、段階的に検討する」として対応を留保した。

なお類型「留学」の主体となる機関に対する審査項目(案)には、コース設定、授業科目、教員数、教員要件、教材、第三者評価等、既存の法務省告示基準とほぼ同様の評価項目が挙がっており、双方の基準の連携や接続も今後検討される見通し。また全ての類型について、移行期間経過後には「一定数以上の公認日本語教師の配置を必須とする」方向性が打ち出されている。

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※関連記事(バックナンバー:「留学生新聞ニュース」 2021.7.30号より)

★「公認日本語教師」資格の大まかな方向性を提示

~文化庁の調査研究協力者会議が報告案公表

国家資格の創設に向けた検討が進められてきた「公認日本語教師」について、制度のおおまかな骨格が固まってきた。文化庁の調査研究協力者会議は729日の会合で、日本語教育の推進に関する新たな報告書を配布したが、この中で同資格の実施方法や運営主体、試験内容等に関する案が示された。

同案によれば、試験は文部科学大臣の指定する法人が実施主体となり、全国で年1回以上、筆記方式にて実施する。筆記試験の内容は、①日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する試験、②現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する試験、の2つを行い、さらに資格取得にあたっては教育実習の履修・修了も求める。教育実習は大学や専門学校等、文部科学大臣が指定した日本語教師養成機関で行い、同養成機関の履修者は、例えば大学の場合26単位以上の取得により教育実習と筆記試験の一部(上記の内①) が免除される仕組みが想定されている。

なお「公認日本語教師」の取得にあたっては大学学士以上の学位を取得要件とはせず、年齢、国籍、母語も問わない。また取得した同資格に関しては更新講習の受講は求めず、各自が知識や技能向上を目指して自分に合った研修を受講するとしている。

一方で、現職日本語教師が同資格の取得を希望する場合には原則として、筆記試験合格と教育実習の履修・修了が必要としつつ、「教育の現場における実践的な資質・能力が担保される者に関しては教育実習の免除などの配慮を検討する」とした。

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2021-08-23 14:47:00
≪香港・中国発≫  ★香港学生3833名が政府支援で中国本土の大学へ進学

 

香港の高校生が中国本土の大学を目指す趨勢が、最近強まっている。香港「文匯報」によると、2020-21年度の1年間で、香港政府教育局の「内地大学進学支援計画」による援助を受け、本土の大学へ進学した香港出身学生の数は前年比19%増の3833名を数えた。このうち約半数は事前審査が簡素化され、高等学校長の推薦等により本土の大学へ直接入学できる新制度の適用者だ。香港政府の計画に対する支援総額はすでに4900万元(約8億円)に達した。

同計画がスタートした2014-15年度時点では、援助対象者の数は263名に止まっていたが、15-16年度は479名、さらに16-17年度には2190名へと急増した。同時期は香港が一連の政治的混乱に見舞われていた頃と重なるが、この間も応募者の数は増加の一途をたどっているという。こうした背景について中国本土の専門家は、本土の大学の学歴が、将来香港へ戻り就職する上でも大いにプラスに働くことや、本土での生活経験を経て中国全域へと視野を広げ人脈を構築できるメリットを挙げる。今後は、香港の発展にとっても、中国本土のバックボーンを持つ人材の重要性が増すことは必至と言える。

直近の2020-21年度は同支援計画の申請要件が一部弾力化され、香港の高校の卒業試験(点数)と校長の推薦など所定の条件を満たした学生は、事前の調査を免除され、特例で本土の大学に直接入学することも可能となった。

目下、「内地大学進学支援計画」を活用した香港人学生の中国本土における入学先ランキング(202021年度)ではトップの南大学(広州)が1339名と全体の3分の1を占め、次いで華僑大学(厦門)505名、広州中医薬大学281名、中山大学(広州)275名、北京中医薬大学151名等となっている。ちなみに首都北京の名門である北京大学と清華大学にはそれぞれ47名及び44名が入学している。

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2021-08-23 14:40:00

912日まで「宣言」延長・対象区域拡大

政府は東京都などに発出中の緊急事態宣言を912日まで延長すると共に、20日から対象区域を京都、茨城、群馬等7府県にも拡大し計13都府県とする方針を決め、菅義偉首相が先の会見で表明した。これに伴う海外からの水際対策については、現時点で大きな変更はない。

 

一方で新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針が再改訂され、学校の取扱いに関する記載事項では、大学、専門学校、高校等に対し、最大約80万回程度分の抗原簡易キットの配布を7月末に開始していることを踏まえ、改めて適切な活用を求めている。

 

これに先立って先般文科省が定めた「高校等における抗原簡易キットの活用の手引き」では、部活動の大会・合宿等に参加する学生や、学生寮で共同生活中の学生が体調不良を訴えた場合、あるいは新型コロナの初期症状として見られる咳、発熱等の軽症がある場合には、各大学等の状況に応じて積極的に検査キットを活用することを呼び掛けている。

 

ただ同キットは無症状者への確定診断や濃厚接触者に対する検査に用いることは推奨されないとして、学校医や医療機関との連携方法など事前事後の対応をあらかじめ取り決めておくよう各教育機関に求めた。

 

★正確なワクチン情報の発信 各大学の取組例は?

――動画・映像を活用/専門的知見をもつ教員が解説―――

 

 新型コロナウイルスワクチンに関する正確な情報を学生向けに発信しようと、各大学が様々な創意工夫を凝らしている。学生の中にはSNS等を通じて拡散される誤った情報や根拠のない噂に惑わされ、接種を敬遠・躊躇する人も少なくないからだ。文部科学省ではこのほど大学拠点接種を実施している大学の中から、他大学にも参考となり得る個別の取組例を収集した。

 

これらの内、慶應義塾大学や長崎国際大学はワクチン接種に関する情報の発信に動画や映像を活用することで、学生の視聴機会を増やす試みを行っている。慶大では大学拠点接種の予約開始に合わせて、ワクチン関連の情報をまとめた解説映像を制作した。映像には附属病院の医師による解説を取り入れ、mRNAワクチンの有効性、副反応、接種後の発熱等への対処法を具体的に紹介。この他に学生たちが連携して作成した情報サイト「大学生向けワクチン情報サイト」も別途公開されている。

 

一方、長崎国際大学は、医師でもある学長がワクチンの有効性や副反応について解説する動画を作成し、授業前に学生が視聴できるよう準備した。動画では、実際に感染した場合起こり得る後遺症にも言及し、「ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回る」ことを説明しており、こうした効果もあって学生の接種率は83%に達している。

 

長崎国際大と同様、専門的な知見に基づく正確な知識を伝える取り組みに力を入れているのが城西国際大学(千葉県)で、感染制御学を専門とする教員が学生向けにオンライン説明会を実施し、ワクチンに関する科学的データ等を示すことで、SNS等の情報に対する冷静な対応を呼び掛けているという。

 

ワクチンに関する情報発信では、動画や説明会のほかに、接種を考える学生が必ず目にする予約ページや大学生協に掲示するポスターなどのツールを駆使する北海道大学のような例もある。文科省によれば、来週23日以降に大学拠点接種を開始する大学は昨日(19日)12時時点で少なくとも43大学に上っており、学生に接種のメリットを伝えるための模索は当面続きそうだ。

 

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2021-08-17 16:14:00

「五輪明け」 明日到着便より受入れ再開へ

 

 

文部科学省学生・留学生課はこのほど『留学生新聞』の取材に対し、5月より再開した国費留学生受入れについての進捗状況を明らかにした。7月上旬までの段階ですでに予定人数の67割程度が来日しており、この間、来日後に日本語等予備教育が必要な大学(学部)、高専、専修学校の学生に加え、すでに第二段階となる大学院レベルの研究留学生等についても受入れを始めたという。

 

東京五輪が開幕した7月はいったん入国を見合わせていたが、明日(818日)の日本到着便を皮切りに、受入れが再開される。文科省では今年4月までの入学予定者について、9月上旬までに受入れを完了するよう、各受入れ教育機関に対して通知を行っており、これまでの入国者も含めると、来日する国費留学生は最大で1100名程度に上るとみられる。

 

☆私費の受入れ再開まだ見通せず 迫る政治の決断

 

一方、私費留学生の受入れ「解禁」に関しては、まだトンネルの出口が見えない状況だ。文科省の関係筋は取材に対して、「(私費についても省内で)検討はしているが、現時点では明確な方向性は出ていない」と述べた。別の消息筋からは「関係省庁間の調整しだい」といった声も出ている。

 

とはいえ、在留資格認定証明書や留学ビザを取得しながらも日本へ入国できない留学予定者が「2万人から3万人程度(関係機関の推計値)」に上っているほか、日本語教育機関等が抱える苦境も「経営を続けられるかどうか、ギリギリの瀬戸際(関係者)」に差し掛かっているのが現状だ。政府は今週から1日あたりの入国者数の上限を3500人へと拡大する方針を打ち出している。コロナ禍のさ中とは言え、「主要先進国の中で目下、留学生の受入れを原則禁止としているのは日本だけ(海外にいる留学予定者)」との指摘も出ており、政治の決断が求められる局面と言える。

 

★猛威ふるう変異株 中国大使館が留学生に再び注意喚起

 

中国駐日本大使館教育処は16日、日本国内で新型コロナウイルスの感染者数が連日過去最高を更新し続けている現状を受け、改めて在日留学生に対し注意喚起を行った。

関係筋によると中国人留学生の間でも感染確認例が毎週、数十名単位まで増えていて、個々には症状が比較的重篤なケースも見られるという。同大使館では、日本の医療機関のコロナ患者受入れ能力が限界に近付いており、感染者がすぐに治療を受けられないリスクが現実のものとなっていると指摘。在日留学生らに対して、①感染力が強いデルタ変異株への自衛意識をより一層高める、②不要不急の外出自粛、三密回避、外出時のマスク着用、ソーシャルディスタンスと手洗い・消毒を励行すると共に、自己意思による積極的なワクチン接種など対策の強化を呼びかけた。

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2021-08-16 12:56:00

 

新型コロナウイルス感染症に伴う水際対策で留学生の新規入国が滞っている状況を受けて、日本介護福祉士養成施設協会(介養協)ではこのほど、出入国在留管理庁長官に対して要望書を提出した。介護現場で将来的に不可欠な役割を担う外国人留学生の重要性を踏まえ、入国制限の早期緩和を求める内容となっている。

介養協によれば平成29年に在留資格「介護」が創設されて以来、介護福祉士の養成校における留学生入学者は増加の一途を辿っており、直近の令和2年度には全入学者の34%を占める2395人に達した。一方、厚生労働省のまとめでは介護職員の必要数は令和7年度には32万人、同22年度には69万人に増える見込み。高い専門性や資質を持つ人材のニーズは今後益々高まるとみられ、留学生はその中核として期待されている。

とはいえ、海外からの入国が困難な状況がこのまま長期化すれば、来日して介護分野を目指す外国人学生の留学断念が相次ぎ、国として人材の中長期的な喪失につながりかねない。介養協は要望書の中で、不透明なコロナ感染状況下で政府の慎重な判断が必要であることに理解を示しつつも、「今後の日本社会に与える影響は計り知れない」とした上で、「外国人留学生の早期の入国制限緩和」を検討するよう入管庁に求めた。

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